第30回 ジャンリシャール TVスクリーン

ジャンリシャールというブランドを聞いても、日本ではあまりなじみが無く知っているひとはかなりの時計好きだと思います。 しかし、このブランドの名前の由来となった、ダニエル・ジャンリシャールの名前をスイスで知らない人は居ないでしょう。
  彼こそはスイス時計産業の中心地であるジュラ地方に時計産業の素地を築いた最大の功労者であり、ル・ロックルの時計学校とシャトー・デ・モン時計博物館に彼の銅像が立っています。ジャンリシャールが時計製造に乗り出したのは1688年ごろと言われています。それまで時計は、各工房で職人が殆ど芸術品と同じく手作りで作っていたのですが、彼は機械メーカーと提携して専門の製造設備を作り分業制を導入しました。これにより、各部品を専門に作る工場、会社をつくり、各工房に部品を供給するシステムを作り上げました。 また、時計の機構でも、カレンダー機構などを発明し、スイス時計産業に大きな功績を残しています。彼自身の名前を冠した会社も子孫がが受け継ぎ、1960年代まで質の高い機械式時計を作り続けてきましたが、セイコーのクォーツショックにより低迷し休業してしまいます。しかし1994年、ジラールペルゴのオーナーであったルイジ・マルカーソ氏がスイス時計産業に多大の貢献をした老舗ブランドの消滅を惜しみ、このジャンリシャールを取得し復活させました。そして新生ジャンリシャールを代表するモデルが「TVスクリーン」なのです。
このモデルは1997年に発表され、ベースのデザインを踏襲しながら様々なバリエーションがあります。 このTVスクリーンの最大の特徴はそのケース形状にあります。1960年代のテレビがモチーフで、角型でも丸型でもない、まるで座布団のように見えることから、クッション型ケースと呼ばれています。 このTVスクリーンが出るまでは、このケース形状は腕時計には殆ど使われて来ませんでした。(他ではパネライ位しかありません) 新しいながらも、どこかレトロさを感じさせるこの形状は発表当時、腕時計界に大きな衝撃をもたらし、10年目になる今も高い人気を維持しています。
  ケース大きさも、紳士用のラージ(41x 39mm)、男女兼用のミディアム(37x 35mm)、 婦人用のレディ(29x 28mm)、横長のミレディ(28.7x31.7mm)と4種類あり、その中でも特にミディアムは、ダイアルカラー5色(ホワイト、アイボリー、ブルー、ブラック、ピンク)とストラップカラー7色(ホワイト、ブラウン、ネイビー、ブラック、レッド、オレンジ、ピンク)とバリエーション豊富で、自分の好みにコーディネイトしてオーダーできるため、いわば自分だけのTVスクリーンを所有することができます。 また、文字盤はギョーシェ彫りが施され見る角度によって微妙に表情がかわり、それにアールデコ調のアラビア数字のインデックスとダイアル地盤の色の組み合わせが絶妙にマッチしています。 また、このTVスクリーンのスペシャルオーダー品として風水の素材、色使いをしたものが存在します。これは2003年に企画されたもので、風水で最強の運気を持つK18ピンクゴールドケースに、幸せの色ベージュの文字盤、財産の象徴の色ワインレッドのインデックスに運のタイミングを逃がさない深紅を針先に乗せてケースバックに「寶」(たから)という文字をいれた、まさしく風水パワーてんこ盛りのデザインがされていたそうです。 残念ながら、何本作られたのか、価格はいくらだったのか(100万円以上?)等、詳細は判っていません。