第28回 ラ・ショード・フォン国際時計博物館

国土の大半を山脈が占めるスイスにおいて、時計産業は観光とならぶスイスの伝統的基幹産業になっています。そして、スイス時計産業の中心的な地域がラ・ショード・フォンです。首都ジュネーブから北に約100kmのジュラ渓谷にあり、フランスと国境を接しています。18世紀ごろから、時計作りに最高の環境を求めて、ジュネーブの周辺から時計職人達が移り住むようになり、次第に時計産業が形成されてゆきました。 このラ・ショード・フォンで、世界的に有名なスイスの時計メーカーの多くが創業し、現在も多くのブランドの本社や工房が軒を連ねています。
また、時計の専門学校もあり、世界中から最高の時計製作技術を学ぶ為、時計技術者や技術者をめざす若者が集まってきています。ラ・ショード・フォンの駅には時計職人達の仕事ぶりを描いた大きな絵が飾られて、この街がまさしく時計の聖地であることを示しています。ラ・ショード・フォンの街は、駅前こそ近代的なショッピングセンターがあり賑わっていますが、一歩街を出れば、美しく静かな田園風景が広がっています。時計職人達が、喧騒のジュネーブから、この静かでゆったりとした環境を求めてラ・ショード・フォンに移り住んだわけが判ります。
そして、時計の歴史を伝えるために、スイス各地に時計博物館がありますが、その中で代表的な博物館が、このラ・ショード・フォンにある国際時計博物館なのです。この博物館は、1865年にこの地の時計専門学校が構想し、1902年にようやく学校内に小さな展示をおこなったのが始まりと言われています。その後、博物館の委員会が基金をつのり、1974年に新たな建物を建てて、現在の場所に移転しました。
1989年には、時計専門学校「 L’ Homme et Le Temps 」 ( 「人と時間」の意味)の一部となり、修理センターも併設されています。
外観は非常に地味ながら、内部は自然光をグラスファイバーで取り入れるなど、凝った工夫をして展示しています。館内は600坪以上あり、ゆっくり見学すれば1日かかります。展示内容は、古い懐中時計や置き時計が多く、それに、かつては建物に組み込まれていた時計などもあり、大きな振り子のついた時計のムーブメントが、天井からいくつ釣り下がっています。
また、腕時計に関しては、殿堂入りした各年代の名機や、ムーブメントが薄型化してゆく様子や、複雑化してゆく時計の機能などが、テーマ別に展示されており、素人にも分かり易いようになっています。さらに、貴重な資料や昔の工具の展示、時計製作工房や、製造作業風景の再現などもされています。
日本でこの博物館に関する話題と言えば、シェルマンのオリジナルウォッチ「グランドコンプリケーション」と「ワールドタイム ミニッツリピータークロワゾネダイアル」がこの博物館に永久展示されることになったことでしょう。
ショップオリジナルの時計が、しかも2本も永久展示されるという栄誉は極めて異例であり、日本人として非常に喜ばしい限りです。
また、スイスにはオメガ、ロンジン、ヴァシュロン・コンスタンタンなどが本社敷地内に自社ミュージアムを持っており、機会があれば、スイスの時計ミュージアム巡りをしてみたいものです。