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第30回 時の記念日と時計の歴史

 6月10日は時の記念日です。この日は、天智天皇10年の4月25日に 「漏刻」(ろうこく)と呼ばれる水時計が設置され、日本に始めて、宮中に時刻が 告知されるようになったことを記念したものです。なぜ、4月25日なのに、6月10日になったのかという疑問が湧くと思いますが、実は旧暦である天智天皇10年の4月25日を現在の太陽暦に直すと671年6月10日に なるのです。
  しかし、日本書記によると、「漏刻」はそれより前の斉明天皇 6年5月に既に設置されていたようですが、日付けがはっきりしないため明確な記録の残っている天智天皇10年の日付けを採用しています。では、時計が人々の生活のなかで使われるようになったのはいったいいつ からなのでしょうか?
  人類が時間を知る為の装置を発明したのは、紀元前 3000〜4000年ごろのエジプトであると言われています。 はじめは太陽の1日の動きによって影の大きさ、方向が変わることによって時刻を知る事のできる 日時計でした。紀元前3000年ごろになると、1日のおおまかな時刻を知る為の日時計の他に短時間の時間経過を知るための砂時計が発明されました。 砂を小さな穴から落とすことで、時間を計るしくみですが、砂を落とす穴の大きさや落とす量を厳密に調整しなければ、異なる時間を 計測することができず、儀式など特定の決まった時間の長さを測る為に使われた ようです。紀元前2000年ごろになると、水時計が発明されました。 原理的には砂時計と同じですが、より長い時間の計測が可能になり途中経過も 砂時計より正確に知ることができました。しかし砂にしろ水にしろ、時計を 作動させてから、どの位時間が経ったのかを知ることしかできず、今が何時 何分なのかという正確な時刻を知ることはできませんでした。
  機械式の時計が発明されたのは、13世紀のイタリアにおいてで、教会の 修行僧が決まった時間に同時に祈りを行うためです。 ひもで吊るした重りを一定の間隔で落とすことにより正確な時間が判るようになっていましたが、大掛かりな機械でした。さらに、振り子の発明により時計は室内に置ける大きさまで小型化されましたが、動力を重力に頼っていたため、持ち運びは出来ませんでした。
  1480年にドイツのペーター・ヘンラインがゼンマイを 発明し、世界で始めて携帯できる時計を作りました。その時計は、文字盤の大きさが50mm位で上を向き、卵のような形だったためヘンラインの住んでいた街の名前をとり、「ニュルンベルグの卵」と呼ばれました。 そして、1675年に「時計学の父」ホイヘンスが、円テンプとゼンマイを組み合わせた時計を発明し、これにより時計の小型化が一気に進み、現在の懐中時計の原型が出来上がりました。
  この後、トゥールヴィヨン、ミニッツ リピーター、スプリットセコンクロノグラフ等の超複雑機構が発明され、時計の小型化、複雑化が進みました。 特に、アラン・ルイ・ブレゲは、上記複雑機構以外にも、自動巻き機構や、ブレゲひげゼンマイなど、今では普通の時計にも 当たり前のように使われている技術を発明し時計産業の発展に大きく貢献した人物として有名です。ブレゲの技術の集大成は、1802年に完成した超複雑懐中時計「マリー・アントワネット」として現在に語り継がれています。
19世紀後半になると、戦争による需要のため装飾品、宝飾品であった時計は丈夫で、正確、時間を見やすい実用性が求められるようになりました。 この需要を見抜き、いち早く質実剛健な実用時計を開発したのが、ロレックス創始者のハンス・ウィルスドルフでした。 今のロレックスの繁栄はひとえに、 ハンスの先見の目によるものです。1969年にはセイコーがクォーツ時計を 開発し、また1972年にハミルトンがデジタル時計を作るなど、時計技術も大きく進歩、変化してきました。
  ソーラーや自家発電時計、電波時計など、 新しい技術が次々と出てくる中、昔ながらの機械式時計も新素材を使うなど、日々進歩しています。今後どのように時計が変わっていくのか楽しみです。


第29回 時計のストラップの種類

 時計を腕に固定するための部品、すなわちストラップは大きく分けて、金属等のブレスと皮革等のベルトに分けられます。
ブレスは通常、駒を繋ぎあわせて組み立てているもので、一部の駒の脱着が可能で、腕廻りにあわせて調整する ことができます。大抵、時計本体ケースと同じ素材で、ステンレススチールが主流です。その他の素材として、ブラス(真鍮にメッキしたもの、低価格の時計に使用される)、K18やプラチナなどの貴金属やチタンなどの新素材が使用 されています。チタンは強度が強くて軽く、さらに人体に対してアレルギーを起こさないため、特に注目されています。最近ではセラミック、特殊ラバーなどハイテク素材で駒を作り、金属パーツで繋ぎあわせるハイブリッドなブレスもよく目にするようになりました。
ブレスの駒は、1ピースのものから いくつものピース(3個、5個が多い)からなるものもあります。また、部品も無垢からの削り出し場合や、板金を折り曲げて作ったもの(安価な時計は殆どこれです)など色々な種類があります。また、金属製でありながら、ベルトと同じ形の編み込み型のブレスもあり、これは腕廻り調整のため切断 しなければなりません。 K18等の貴金属をケース、ブレスに使用した薄型 高級ドレスウォッチによく見られます。1度切断すると元に戻すことはできませんので注意が必要です。
  皮革等のベルトは、天然素材と人工素材に分けられます。天然素材で最も一般的な素材は 牛革(カーフ)です。高級時計には、ワニ革 (クロコダイル、アリゲーター)トカゲ革(リザード)だちょう(オースト リッチ)等がよく使われます。その他には、サメ(シャーク)蛇(パイソン)豚(ピッグスキン)、最近のめずらしい素材としてエイ(ガルーシャ)などが あります。人工素材としては、合成ラバー、ナイロン、ウレタン、ケブラー、 プラスチック、カーボン等があります。

・カーフスキン 生後6ヶ月以内の仔牛の皮をなめしたもの。
きめ細かく柔らかいのと比較的安価なため、最もよく使用される。
・クロコダイル 中南米産カイマンワニの脇腹の皮を使用。
高級クロコダイルとして最も一般的なもの。 丸みを帯びた模様(丸斑)が特徴。
・アリゲーター アメリカ、ミシシッピーワニの腹部の皮を使用。ワニ革の中で最高級品とされている。
クロコダイルより模様が角張っており竹斑と言われている。とくに腹部中央の模様は珍重される。
・リザード トカゲの中でも高級品とされるのがナイルオオトカゲ。
染色がし易いため、カラフルな色にされ婦人用としての需要が高い。
・オーストリッチ 飼育だちょうの革。羽を抜いたあとの毛穴の丸いつぶが特徴。
この粒の大きさが揃っていて間隔の均等なものが高品質なもの。
・シャーク 主にヨシキリザメの革をなめしたもの。
サメの表皮はサメ肌特有の楯鱗という硬いリン酸カルシウムのざらざらした組織があり、やすり代りとして使用されることもあるがこの組織を塩酸で溶かしてなめす。
・パイソン ニシキヘビ等大型の蛇の総称で、ダイアモンド型のうろこや個性的な斑紋が特徴。
他の皮に比べて薄く柔らかい。
・ガルーシャ エイの皮をなめしたもので、小石を敷き詰めたような独特の風合いがある。
非常に硬く、加工の時、刃物が刃こぼれする場合もあるほど強靭で、加工が難しく手間がかかる。
・ケブラー 米国デュポン社により開発された芳香族ポリアミド樹脂。 分子構造が剛直で直鎖型の骨格を持つため、鋼鉄の5倍の引張強度と他の樹脂より高い耐熱性を有する。
ベルトは繊維状にしたものを編み込んで作る。防弾チョッキ等にも使用される。

第28回 ラ・ショード・フォン国際時計博物館

 国土の大半を山脈が占めるスイスにおいて、時計産業は観光とならぶスイスの伝統的基幹産業になっています。そして、スイス時計産業の中心的な地域がラ・ショード・フォンです。首都ジュネーブから北に約100kmのジュラ渓谷にあり、フランスと国境を接しています。18世紀ごろから、時計作りに最高の環境を求めて、ジュネーブの周辺から時計職人達が移り住むようになり、次第に時計産業が形成されてゆきました。 このラ・ショード・フォンで、世界的に有名なスイスの時計メーカーの多くが創業し、現在も多くのブランドの
本社や工房が軒を連ねています。
また、時計の専門学校もあり、世界中から最高の時計製作技術を学ぶ為、時計技術者や技術者をめざす若者が集まってきています。ラ・ショード・フォンの駅には時計職人達の仕事ぶりを描いた大きな絵が飾られて、この街がまさしく時計の聖地であることを示しています。ラ・ショード・フォンの街は、駅前こそ近代的なショッピングセンターがあり賑わっていますが、一歩街を出れば、美しく静かな田園風景が広がっています。時計職人達が、喧騒のジュネーブから、この静かでゆったりとした環境を求めてラ・ショード・フォンに移り住んだわけが判ります。
そして、時計の歴史を伝えるために、スイス各地に時計博物館がありますが、その中で代表的な博物館が、このラ・ショード・フォンにある国際時計博物館なのです。この博物館は、1865年にこの地の時計専門学校が構想し、1902年にようやく学校内に小さな展示をおこなったのが始まりと言われています。その後、博物館の委員会が基金をつのり、1974年に新たな建物を建てて、現在の場所に移転しました。
1989年には、時計専門学校「 L’ Homme et Le Temps 」 ( 「人と時間」の意味)の一部となり、修理センターも併設されています。
外観は非常に地味ながら、内部は自然光をグラスファイバーで取り入れるなど、凝った工夫をして展示しています。館内は600坪以上あり、ゆっくり見学すれば1日かかります。展示内容は、古い懐中時計や置き時計が多く、それに、かつては建物に組み込まれていた時計などもあり、大きな振り子のついた時計のムーブメントが、天井からいくつ釣り下がっています。
また、腕時計に関しては、殿堂入りした各年代の名機や、ムーブメントが薄型化してゆく様子や、複雑化してゆく時計の機能などが、テーマ別に展示されており、素人にも分かり易いようになっています。さらに、貴重な資料や昔の工具の展示、時計製作工房や、製造作業風景の再現などもされています。
日本でこの博物館に関する話題と言えば、シェルマンのオリジナルウォッチ「グランドコンプリケーション」と「ワールドタイム ミニッツリピータークロワゾネダイアル」がこの博物館に永久展示されることになったことでしょう。
ショップオリジナルの時計が、しかも2本も永久展示されるという栄誉は極めて異例であり、日本人として非常に喜ばしい限りです。
また、スイスにはオメガ、ロンジン、ヴァシュロン・コンスタンタンなどが本社敷地内に自社ミュージアムを持っており、機会があれば、スイスの時計ミュージアム巡りをしてみたいものです。

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第27回 アラン・シルベスタインとバウハウス

 アラン・シルベスタインの作る時計は、一目見たら忘れられない強烈な印象を 与えます。 まさに近代アートがそのまま時間を表示している感じがします。 アラン・シルベスタインは元々インテリアデザイナーとしてパリで活躍していましたが、1987年バーゼルフェアで3本の作品を発表しました。現代の時計は基本的に工業製品であり、どんな高級品であっても量産を前提と しています。 しかしアラン・シルベスタインはそれを、まさに芸術作品を仕上るのと同じ、職人が丁寧で繊細な作業を長い時間をかけて行なっています。年間の生産本数は約2000本、バウハウスの理念のもと、幾何学を取り入れたデザイン、赤、青、黄色といった原色を使い、他のブランドには無い、独創的な 個性を放つ時計を作り続けています。アラン・シルベスタインの時計は「アートピース」と呼ばれ、その幾何学デザインや色使い、そのデザインや機能に込められたメッセージと遊び心、そして数々の新機能開発が、常に世界中の注目を浴びています。
  特に「スマイルデイ」と呼ばれる曜日表示はユニークで、曜日を表す文字の代りに、日曜日はニコニコ顔、月曜日は憂うつ顔といったように、表情で曜日を知らせるしくみになっています。 そしてアラン・シルベスタインは、機械式時計の複雑な機構を「使う」のではなく「活用し、革新してゆく」ことに、そして使いやすく、優れた機能と美しい デザインが結合した時計を作り続けることに情熱を燃やし続けています。
  ところでアラン・シルベスタインのデザインのベースになっているバウハウスの理念とはどういったものなのでしょうか? デザインの勉強をされている方ならば、1度は耳にしたことがあると思いますが「バウハウス」は1919年、ドイツのワイマール市に開校された、造形芸術学校 のことです。 初代校長で建築家のW・グロピウスは、「生活機能の総合場である建築物(家)のもと、彫刻・絵画・工芸などの諸芸術と職人的手工作など一切の造形活動を結集して、芸術と技術の再統一を図る」という教育理念で、新しい教育システムを実施したのです。 この理念を簡単に言うと 「生活に豊かさをもたらすとともに、大量生産による工業製品に相応しい形を追求する = 格好良くて、しかも造り易いデザインを考える」となります。 教授陣としては、当事の高名な画家や、陶芸家、舞台芸術家等がおり、デザイン運動のひとつの頂点を確立したものとして高く評価されています。特に グラフィックデザインおよび家具デザインの分野で、その成果が世界中に認められています。 1926年には、グロピウス自身が設計したデッサウの校舎に移転して、近代工業が発展しつつある当時において、その生産形式・生活様式に応じた芸術のあり方を示しましたが、1933年にはナチスにより一時閉鎖されてしまいました。 現在その理念は、再開されたワイマール・バウハウス大学、シカゴの「ニュー・バウハウス」および、ドイツのウルム造形大学等によって継承され、全世界に広まっています。

アラン・シルベスタインのホームページはこちら


第26回 時計業界2006年の傾向

 ここ数年、スイス2大時計フェアの、バーゼルフェアとジュネーブサロンにおいて、どんな新作が発表されるかが、世界中の注目を集め、時計雑誌等もこぞって特集するようになりました。そこで各メーカーもとにかく話題作りにと、目新しいデザインや新機構、複雑機構を搭載したモデルを数多く発表してきました。それが2005年のトゥールビヨンブームとなり、ブライトリングやシャネルなど、思いもしなかったようなブランドまでトゥールビヨンモデルを発表してきました。
  しかしながら2006年は、技術力は示せても実用性が薄く、非常に高価となるトゥールビヨンモデルは少なくなり、時計の最も基本的で重要な「正確な時刻を安定して表示する」機能を進化させたモデルが主流になってきました。その1つがシリコン製のガンギ車とヒゲゼンマイを使った脱進機です。脱進機とは時計の精度を司る中心の機構で、ヒゲゼンマイによるテンプの往復回転運動を、アンクルとガンギ車により安定した等速回転に変換するところです。この機構はほとんどの機械式時計に採用されており正確に動くためには、適切な潤滑が必要です。しかし、完全な潤滑油は無く、次第に劣化して行くため、オーバーホールによる洗浄、再潤滑油注油が必要となります。 これらの部品をシリコンに変更すると、潤滑油が不要となるため、メンテナンスがずっと楽になります。このシリコン製脱進機はパッテックフィリップ、スウォッチグル−プ、ロレックスの3社が共同で開発しており、いずれ各メーカーのムーブメントに搭載されるものと思われます。また、新機構ではプッシュボタンが無く、風防の端を押して特定方向に本体を傾けることにより、クロノグラフをスタートストップ操作するジャガー・ルクルトの「アムボックス2クロノグラフ コンセプト」が注目を集めていました。さらに各メーカーとも新素材の採用を積極的に行っています。
  ゼニスの新スポーツ系「デファイ」シリーズは、本体にアルミ、チタン合金、カーボン文字盤、ブレスにケブラー繊維、SS、カーボンを使い、まさに新素材のオンパレードとなっています。また、他メーカーもセラミック、チタン、シリコン等を多く使ってきており、特にウブロの新シリーズ「ビック・バン」よりマグネシウムケース、チタン地板を世界初採用した「マグ・バン」は高い評価を受けています。このモデルは加工が非常に難しく、発火しやすいマグネシウムケースをイタリアのホイールメーカー「マーヴィック」と共同開発し、総重量65gという超軽量を実現しています。
 デザイン面では以前のように奇抜で目を引くような派手なものは少なくなり、どこか懐かしさを感じさせるオーソドックスなものや、かつてのデザインの復刻版など「原点回帰」の傾向が強くなってきています。また、ケース素材で、超高級時計に上品なローズ(ピンク)ゴールドを使用する傾向もありロレックスでもローズゴールドのモデルを多数リリースしてきています。
 文字盤色では、グレー系、ブラウン系の渋めの色合いで、落ち着いた大人の雰囲気を感じさせるカラーに人気が出てきているようです。また、フランクミューラ−、パネライ等に代表される「デカ厚」ブームもそろそろ終わりで、来年あたりより各メーカーともケース径40mm以下で薄型のモデルに主力を移行していくのではないか、との観測も出ているようで、次はどんな時計が流行るのか目が離せないところです。


第25回 時計技術者になるには

 このコラムを読んでくださっている方は、特に時計に興味をお持ち頂いている方だと思います。私はこの質屋の業界に8年になりますが、それまでは特に時計に興味はありませんでした。ブランドもロレックス、オメガくらいしか知りませんでしたし、どの位の値段がするものなのかも知りませんでした。それまでに私が付けたことのある時計は、高校入学のときに買ってもらったセイコーの自動巻時計を皮切りに、カシオのワールドタイム付デジタル時計(SS側で、世界地図が液晶に表示される)、Gショック(たぶん5600系)そして一番長くもっていたのがセイコーのクロノグラフクォーツ(ムーンフェイス付)でした。外国製のブランド時計などまったく興味がなかったのですが、転職してこの仕事に就き、なんで今までこんな面白い、素晴らしいものに興味がなかったんだろうと、思っています。
興味が湧いてくれば、もっと色々と知りたいと思うもので、時計の歴史や取り扱ううえでの知識、どんなメーカーがどんな時計を出しているのか、など調べて、このコラムを綴ってきました。そして次第に自分でも機械式時計の修理ができたら、と思うようになってきました。
 では、時計の修理をできるようになるには、どうしたらよいのか調べてみました。私が大学を卒業して就職した20年前は多分時計専門の学校は無く、その頃は時計メーカーに就職してそこで勉強するしかなかったと思います。
今は時計専門学校が、私の知る限りでは2校(いずれも東京)にあります。もしかしたら、工業系専門学校の1学科としてあるかもしれませんが、調べきれていません。
 時計修理技能士、という技能検定の国家資格がありますが、受験資格は学歴、実務経験年数、職歴等で細かく規定されており、3級、2級、1級があります。学科と実技の両方がありますので、おそらく専門学校もしくは職場での実務経験がないと受験できないものと思います。ただし、時計修理技能士は免許ではないので、この資格がなければ、一人で時計の修理ができない、ということではありません。
 時計専門学校ですが、1つは、時計専門雑誌に広告をだしている専門学校ヒコ・みずのジュエリーカレッジ ( http://hikohiko.jp )ともう1つがロレックス株式会社の運営する、東京ウォッチテクニカム ( http://www.t-wt.jp ) です。
 ヒコ・みずのジュエリーカレッジの期間はコース別に2〜3年間、定員はあるようですが、具体的に何名とまでは表示されていませんでした。受験資格は高校卒業と同等以上、願書受付は、2007年度は大学生・一般で9月1日(推薦枠)からと11月1日(一般枠)からです。筆記試験は無く、書類選考と場合によって面接で合否を決めるようです。また、短期の体験コースもあるので、真剣に考えている方は応募してみてはどうでしょうか?(2006年は8月26日、30日に開催されます)
  東京ウォッチテクニカムは12名しか募集しません。受験資格は高校卒業と同等以上、願書受付は、2007年度は9月11日締め切り、こちらは筆記試験、小論文、面接があり、2年間の授業内容もヒコ・みずのジュエリーカレッジの最上級クラスに相当する、本当のプロを養成するかなり厳しい学校のようです。どちらの学校も東京にあり、実技中心の授業になりますから、東京近郊にお住まいの方しか通うことができません。
  詳しくは、各校のホームページ、および直接学校にお問い合わせください。

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第24回 時計の磁気帯び

 時計の精度を狂わせる要因の1つに磁気帯びがあります。以前は、時計の精度を狂わせる要因の大半は水、および衝撃でしたが、防水性能の向上、およびカシオのGショック等の対衝撃性を備えた時計が開発されたことにより、これらの割合は低くなってきています。 代って急浮上しているのが、「磁気帯び」なのです。
 ここ十年の間に、パソコンや携帯電話など、強い磁気を発生する機器が身の回りに急速に増えました。そして、時計もその強い磁気にさらされるようになったのです。水や衝撃とは違い、磁気は目に見えず、いつのまにか時計内部に入り込み、残留してしまいます。
  また、すぐに外的障害が現れるわけではありませんので、余計に厄介です。時計が磁気を帯びてしまうと基本計時(規則正しく時間を刻む機能)が乱れて、時刻合わせを何度してもすぐに時刻が狂うようになってしまいます。磁気による影響は、機械式、アナログ式クォーツ、デジタル式クォーツによって異なります。
 機械式は、テンプのヒゲゼンマイが、炭素鋼などの磁性材料でできており、磁気の影響で、テンプの振り角が狭くなり、時間が狂ったり、ゼンマイのパワーリザーブ時間が短くなったりします。また、部品が磁化してしまうために、磁界から遠ざけても磁気が残留してしまいます。
 アナログ式クォーツの場合、永久磁石を使用したステップモーターを使用して、針を動かしています。磁気により、モーターの正常な回転が狂い、時間が遅れたり、進んだり、針が全く動かなくなったりします。しかし、短時間であれば、磁気から遠ざけ、改めて正確な時間に合わせ直しておけば、元に戻ります。 しかし、長時間磁気の影響を受けていると、部品が磁化してしまい、磁気から遠ざけても、元に戻らない場合があります。
 デジタル式クォーツは、基本計時および駆動部分が完全に電子化されているため、磁気の影響は殆ど受けません。ただし、アラーム付等電磁スピーカーが付いているものは、強い磁界の中では、音が変調することもあります。
 磁気は目に見えませんが、特別なものでもなんでもなく、我々の身の回りに溢れています。 テレビ、オーディオ、パソコン等の家電製品、携帯電話や、バック、家具のマグネット、エレキバンや磁気ネックレスなど、強い磁界を発生するものが、気が付かないうちに時計の精度を狂わせています。
 磁界の強さを示す単位にはガウス(磁界線の密度を表す)とアンペアメーター(磁界の強さを表す)の2つが有りますがアンペアメーターの方が国際単位として認められています。(1ガウス=80A/m)
 日常よく使用している電磁気製品の発生する磁界の強さはおおよそ以下の様になります。

テレビ
密着状態で
800
A/m程度
携帯ゲーム機
密着状態で
2400
A/m程度
パソコンスピーカー部
密着状態で
3200
A/m程度
オーディオスピーカー部
密着状態で
12000
A/m程度
携帯電話スピーカー部
密着状態で
24000
A/m程度
磁気ネックレス
密着状態で
96000
A/m程度
バック固定開閉磁石
密着状態で
120000
A/m程度

 特にオーディオスピーカーの上は小物置きとして最適なため、つい時計などを置いてしまいがちですが、時計にとっては最悪の環境になります。
 また、サイフ、携帯電話、眼鏡等身の廻りのものを固めておくとき、時計も一緒にしてしまいがちですが、これも時計が携帯電話の磁界の影響を受けてしまいます。また、意外と盲点ですが、時計をカバンにしまう場合も、マグネットの付いているカバンは避けるべきです。
 時計を磁気から守るには電磁気製品にできるだけ近づけないことが重要です。100000A/mの強い磁界でも1cm離せば10000A/m、5cm離せば500A/mまで弱まります。ですから時計の保管場所に気をつけて、できるだけ磁気の影響の無いところを選び、電磁気製品から必ず5cm以上離すようにしてください。
 特に落としたり水に浸けてしまったりした覚えが無いのに、時間が狂うことが頻繁におこるようであれば、磁気帯びを疑ってみましょう。磁気帯びしてしまった時計はできるだけ早く、メーカーまたは時計専門店に依頼して、磁気抜きを行ってもらいましょう。


第23回 チュードルとロレックス

 皆さんはチュードルというブランドをご存知でしょうか?
チュードルの創設は1930年、そのモデルは、ロレックスに酷似しています。それもそのはず、チュードルはロレックスの創始者であるハンス・ウィスドルフが立上げたロレックスのデフュージョン(廉価版)ブランドだったのです。ロレックスは今日でこそ、高級時計として抜チュードル 時計群の知名度を誇りますが、それは1970年代に入ってからのことで、1930年代は拡販に四苦八苦していた時期でした。当事、ロレックスの本社はイギリスにあり、イギリスでの販売を最優先に、時計店に売り込みを続けていましたが、なかなか成果があがりませんでした。1927年に、ドーバー海峡遊泳横断によって、オイスターケースの高い防水性が証明され、ロレックスの技術力の高さは、誰もが認めるところとなっていましたが、お店になかなか置いてもらえませんでした。それは、価格が高すぎたからです。宝飾系ブランドで富裕層がターゲットであればともかく、実用時計としては、一般のユーザーには手の届かない価格設定になっていました。
  ここで普通の会社であれば、価格を下げて販売量を増やし、薄利多売で売り上げを確保するところですが、そうするとブランドイメージが低下してしまいます。そこで、ハンスはロレックスのブランドイメージを損なわず、利益をあげる方法を考え出しました。それはリーズナブルな価格帯の別の時計ブランドを立上げ、それにロレックスのオイスターケースを流用したのです。そして、ロレックスのブランドイメージを低下させることなく、オイスターケースの性能をアピールし、また、新ブランドの販売で利益を得ることに成功したのです。ここで、ハンスはイギリスでの販売を重視して、ブランド名をイングランド王を何人も輩出した名門チューダー家の名前を冠した「チュードル」とし、またトレードマークにチューダー朝イングランドの紋章であるバラをアレンジしたものを使用しました。ハンスの死後、1970年ごろに現在の盾の紋章に変更されましたが、それまで何種類かのバラのトレードマークが使用され、アンティーク時計愛好家の間では、バラマチュードル 時計ーク入りのチュードルは高い人気があります。現在の盾のマークは、チューダー家の家紋をアレンジしたものです。1970年代に入り、ロレックスの高級時計としての地位が確立されると、デフュージョンブランドであるチュードルの実質的な役目も終わりましたが、生産は続けられました。チュードルには、ロレックスでは非常に高価なスポーツモデルに対応する機種がラインナップされており、海外ではロレックスのデイトナに相当するチュードルクロノタイムは人気がありました。外装部品はロレックスと共通のものが多く、またムーブメントとしては、バルジュー7750をベースとしていたため信頼性が高かったからです。日本でクロノタイムが注目され始めたのは、88年におこったデイトナ騒動により、あまりにもデイトナの入手が困難になり、その代用品とされたのがきっかけです。それまで日本にチュードルの正規代理店が無かったため、日本での知名度は殆どなかったのと、デフュージョンブランドということで低く見られ、ブレイクしませんでした。97年に、プロゴルファー タイガー・ウッズとのダブルネームのクロノタイムが発表され、本家ロレックスには無い豊富なダイアルカラーバリエーションにより日本でも大ブレイクし、「チュードルクロノタイムはタイガー・ウッズの代名詞」と言われるまでになりました。正確な定価は不明ですが、新品で20〜30万円位、中古なら10万円台で販売されており、定価で70万円以上するデイトナにはちょっと手が出ないという人にはオススメかもしれません。

チュードル ホームページ http://www.tudorwatch.com/


第22回 独立創作時計師協会(通称アカデミー)

 時計王国スイスにおいて、どこの時計会社にも属さず、個人で、殆ど手作りで時計を製作し、販売している工房があります。そしてその独立時計師たちが集まり、団体を作っています。
それが独立創作時計師協会(通称アカデミー)なのです。彼らの独創性や技術力は非常に高く評価され、世界の時計業界でも一目おかれる存在となっています。現在の会員は20名ほどですが、新規参加や会社を興して脱退する会員もいて、正確な数は不明です。 現在大ブレーク中のフランク・ミューラー氏も独立創作時計師協会(以後アカデミーと称す)に所属していました。アカデミーは独立時計師のヴィンセント・カラブレーゼ氏、スヴェン・アンデルセン氏らが中心となり、1985年に設立されました。
 その他にフィリップ・デュフォー、キュー・タイユウ、ヴァネイ・ハルター、フランソワ・ポール・ジュルヌ、アントワーヌ・プレジソウなどが名を連ねています。アカデミーが設立される前の80年代前半、機械時計中心のスイス時計産業界はクォーツショックにより壊滅寸前の状態でした。大規模な有力ブランドはクォーツ時計を生産するか、あくまで機械式で対抗する資金力がありましたが、多くの中小ブランドにとっては厳しい時代でした。
 この危機を救ったのが、ユリス・ナルダンのルードヴィッヒ・エクスリン博士でした。1985年に発表された「アストロラビウム・ガリレオ・ガリレイ」はその複雑さとデザインから、機械式時計を見直させるきっかけとなり、スイス時計産業界を復興させる起爆剤となりました。(伝説を持つ時計 第8回 ユリス・ナルダン 天文時計3部作 参照)これを機に独立時計師たちは、自由な発想で腕時計を作り始めました。彼らは、ムーブメントやケースの製作から、芸術的な文字盤装飾などの仕上げまで、一貫して自分で行うマニュファクチュールを徹底し、巨大ブランドにはできないユニークなモデルを作ることが出来たのです。彼らの作品はどれも個性的で、一目見たら忘れられなくなるようなものばかりです。毎年のバーゼルフェアにも小さなブースながら出展し、知名度も上がってきましたが、生産数が少なく、価格も数百〜数千万円もするものが中心であり、今まではマニアックなコレクター以外に手にすることはありませんでした。しかしここ数年、ユニークながら低格の商品も出してきており、中には機械式で30万円代で手に入るものもあります。アカデミー所属の独立時計師のなかで最もユニークかつリーズナブルな価格で作品を提供しているのが、アカデミー創始者の1人である「ヴィンセント・カラブレーゼ」です。この時計師は天才魔術師と呼ばれおり、ほとんど独学で時計の修理、製作技術を学んでいます。現在、クォーツ1種類、機械式6種類の計7つのモデルが発表されていますが、どれも不思議な機構を有しており、まさしく魔術師の名にふさわしい作品です。カラブレーゼ時計細工
  唯一のクォーツ時計「モナリザ」は6時位置にモナリザの絵があり、それが、12時から始まって、1時間ごと(正時)にジャンピングアワーと同じ仕掛けで瞬時に絵が変わるというものです。(どう絵が変わっていくのかは秘密!?) これは10万円です。 「サントラル」というモデルは、大きな数字のジャンピングアワーが時計の中央に配置されており、その周りを分表示の矢印が回転するもので、どんな機構になっているのか見当もつきません。(60万円) また、矢印付ジャンピングアワーの数字自身が外周を回りながら、分を表示する「バラディン」(32万円)、昼と夜で文字盤の数字が、アラビア数字からローマ数字に瞬時に変わる上に、12時位置には日付表示まであるという「ナイト&デイ」(43万円)、月、曜日、日付のトリプルカレンダーに加えて、52周表示、パワーリザーブまでついて、しかもそれを1つのリューズのみで操作する「フィフティーツー」(70万円)などなど、持っていれば注目間違いなしの作品ばかりです。 しかもこの機械式のベースムーブメントはすべて「ETA2892A」という一般的な汎用ムーブメントであり、ヴィンセント・カラブレーゼは、この複雑な機能を、極めてシンプルなメカニズムで実現してしまうのがすごいところです。もし機会があれば、現物を見てみることをオススメします。
 誠に残念ですが、ヴィンセント・カラブレーゼの時計は現在非常に入手困難な状態にあります。しかし、2004年にヴィンセント・カラブレーゼ氏が新ブランドNHC(エヌエイチシー)を立ち上げており、こちらのブランドにも似たような機構の時計があります。 ぜひ、そちらもご覧ください。

ヴィンセント・カラブレーゼ、NHC(エヌエイチシー)

取り扱い:スイス デザイン オンタイム(株)
TEL 03−3524−2022
公式ホームページ(英語) http://www.vincent-calabrese.ch/

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第21回 ショップオリジナルの時計

 「自分の好みの時計をオーダーメイドする」というのは時計愛好家にとっては究極の夢です。 もちろん、お金に糸目をつけなければ可能ですが、少々の金額ではメーカーは動いてくれませんし、それでは一般の人には無理です。
今は、完全にメーカー主導の形で、大量生産のブランド時計を宣伝により、洗脳に近いかたちで選ぶ、というより選ばされているのが現状です。 しかし、このような中で、「自分自身が欲しいと思う時計」を作る時計店が出てきました。それがショップオリジナルの時計なのです。
ブランド時計メーカーは、ジュエリーメーカー、服飾ブランドが時計事業に乗り出したり、もとは小さな時計工房から大きくなった専業時計メーカーが多いのですが、中にはそれらの商品を扱う小売り店から、オリジナルの時計を作るようになり、時計ブランドとなった会社もあります。 ダンヒルはタバコ店から、ティファニーは骨董品と文具を扱う店から、パネライ、グリモルディーは高級時計店より、時計メーカーとなっています。 これらと同じように日本にも、ショップオリジナルの時計を製造販売している時計店が何店かあります。 その代表格は、「シェルマン」で銀座に店舗を構える高級時計とアンティーク時計を扱うこだわりの時計店です。
1996年に発売された世界初のクォーツによる超複雑時計「グランドコンプリケーション」は、クォーツの新たな可能性を世界に示しただけでなく、精緻なギョシェ彫りの文字盤や、張り込み式のムーンフェイズなど、数百万円クラスの時計に引けを取らない仕上げが評価され、スイスのラ・ショードフォン国際時計博物館に永久展示されました。
また「クロワゾネ」ダイアルの回でも説明しましたが、シェルマンの「ワールドタイムミニッツリピーター クロワゾネダイアル」は、バーゼルフェア2002年にデビューし、この時計も同国際時計博物館に永久展示されています。ショップオリジナルの時計が、しかも2本も
同国際時計博物館に永久展示されたことは極めて異例のことで、「シェルマン」がいかにクオリティーの高い時計を作り、それが世界に認められた事を示す証です。GXS900
また、銀座 天賞堂、横須賀の大安堂、ケントレーディング、TICTAC、ベスト新宿などが、ショップオリジナルの時計を製造、販売しています。中でも、最も充実しているのが、ベスト新宿が展開するブランド「GSX」です。
「GSX」のコンセプトは「最高のセカンドウォッチ」と、しています。 例えば、ロレックスやフランク・ミューラーを持っている人が、ちょっと気分を変えてみたくなった場合や、オーバーホールに出している間の代替えとして着けるのに、ふさわしいデザインと品質を提供することを目的としている、ということです。
リーズナブルな価格と豊富な種類でクォーツ式が中心のGSXスマートシリーズ、ソーラー電池と丸みを帯びたUFO型ケースを組み合わせたGSX211、212シリーズ、機械式およびクォーツ式で展開するGSXのフラッグシップモデルとも言うべきGSX900、901シリーズ、クォーツ式の本格的グランドコンプリケーション ボラードシリーズなど、価格、デザイン、性能をお好みに応じて、選ぶことができます。また、スマートシリーズおよびGSX900、901シリーズは、映画やスポーツ選手とコラボレーションした限定モデルや、クリスマス限定モデルが毎年発売されて、コレクション性を高めています。 映画ではスパイダーマンやマトリックス、バットマンなど、スポーツ選手では、
巨人軍やフォーミュラーニッポンチームのインパル等とコラボレートし、殆どのモデルは売り切れになっています。また銀座、川崎にはGSX専門の店舗をオープンし、ラインナップも益々充実させています。

取り扱い:ベスト新宿GSX WATCH JAPAN 03-5360-6705
GSXホームページ www.gsx-watch.com

(2005年6月現在)


第20回 バーゼルフェアとSIHH(ジュネーブサロン)

 バーゼルフェアとは毎年春にスイスのバーゼル市で開かれる世界最大の時計、宝飾品見本市です。
 期間は1週間前後で世界各国からメーカー、バイヤー、ジャーナリスト、一般客など10万人以上が集まります。 歴史も古く、時計業界では最も重要なイベントで、時計だけでも500以上のブランドが出展し、各ブランドが新作やコンセプトモデル、フラグシップモデル(代表的な主力商品)を発表します。 画期的な新製品や新しいトレンド商品が一堂に揃うため、業界関係者だけだなく、一般ユーザーの注目も年々高まっています。 開催期間中は各メーカーが主催するパーティーも毎晩のように開かれ、VIPユーザー、業界関係者の招待客のみ入場可能なブライトリングのサプライスパーティーなどはマニア垂涎の的となっています。
 また、各ブランドのブースも高級ブティックさながらの作りとなっており、それぞれ趣向を凝らして他のブランドとの違いを打ち出しています。
 ロレックスのブースはセキュリティーが厳重で、アポイント無しでは業界関係者でも入れてもらえないそうです。
 各メーカーは、新作や限定品、技術力をアピールするコンセプトモデルを発表し、その場で受注することもあります。 特にマニアの間で人気の高い新作限定品などは、このバーゼルフェアで予約数が予定製造本数に達してしまい
商品が一般小売り市場に出回らないこともあります。 コンセプトモデルは一般に発売されることはなく、各メーカーが自社の博物館に展示するか、アンティコルムなどの特別オークションに出品されます。
  SIHHは高級時計ブランドを紹介するのにふさわしい会場を、ということで1992年にカルティエを中心にバーゼルワールドから独立して発足したのが始まりで、リシュモングループを中心とする16のブランドが参加しています。
 開催地はスイスのジュネーブ市で、一般客も多く来場するバーゼルフェアとは異なり、SIHHから招待を受けた商談関係者やジャーナリストなど、限られた人だけが入場を許されています。 ジュネーブサロンの愛称のとおり、会場は落ち着いたムードが漂い、まさにVIP限定の高級サロンといった趣です。
  SIHHの参加ブランドは現在 カルティエ、オーデマ・ピゲ、ボーム&メルシー、IWC、ジャガー・ルクルト、ジラール・ペルゴ、パネライ、ピアジェ、ダンヒル、ヴァシュロン・コンスタンタン、ヴァンクリーフ&アーペル、ランゲ&ゾーネ、モンブラン、(ダニエル)ジャンリシャール、パルミジャーニ・フルーリエ、ロジェ・デュブイ の、老舗ブランドや個性豊かな新興ブランド16社です。
 SIHHは、バーゼルフェアとほぼ同時期に開催され、世界中の時計業界の人達は毎春スイスに集まり、バーゼルフェア、SIHHをはしごするのが通例となっています。
 この2大展示会のほかにジュネーブ郊外で、フランク・ミューラーを中心にWPHHという高級時計展示会がやはり春に開催されています。 もとは強大化、大衆化するバーゼルフェアや、エクスクルーシブな(排他的、独占的な)SIHHのいずれにも属することなく独自の道を歩むために、1998年にフランク・ミューラー・ウォッチランド社が自社敷地内で開催したのが始まりです。 現在、フランク・ミューラーの他にピエール・クンツ、ヨーロピアン・カンパニー・ウォッチが参加しています。
 また、この時期にバーゼル、ジュネーブ(SIHH)の会場周辺で、独自の展示会をおこなうブランドも増えてきており、時計の商売に関わる者として一度は訪ねてみたいものです。


第19回 芸術品「クロワゾネ」ダイアル

 皆さんは「クロワゾネ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
 耳慣れない言葉ですが、どこか不思議な響きを持っています。「クロワゾネ」とはフランス語で「仕切る」という意味があり、日本語では「有線七宝」と呼ばれています。 表面にダイレクトに絵を描きいれる「本七宝」とは異なり、貴金属の線によるアウトラインを作りその領域にガラス質の1種であるエナメル系の釉薬を流し込み、1色ごとに焼き入れを行って、最後に磨きをかける、非常に手間のかかる高度な技術を要する方法です。この「クロワゾネ」のもととなる「七宝」の歴史は、古代エジプトまで遡ることができ、中世ではキリスト教に関する作品が多数残されています。
 1600年代、懐中時計の蓋にエナメルで肖像画や風景画を描くことが大流行して、現在ジュネーブのパテックフィリップミュージアムでその実物を見ることができます。 また1950年代に作られた、クロワゾネ文字盤を持つパテックフィリップの腕時計はオークションで2億円ぐらいの値段がつくほど貴重なものです。
 クロワゾネ文字盤の製作は、殆どが職人の手作業で行われます。 まずベースとなる貴金属の板に仕切りとなる線を張りつけ、もしくは板そのものを削り込み、釉薬をのせる窪みを造ります。 後で何度も焼き入れをして歪みが出ることを想定して、この時点でベース板の厚みの微調整が行われます。
 このベース板をまず、7〜800度に熱した電気炉で焼き、油や塵を焼き飛ばして釉薬のノリを良くする下準備をします。 ベースが銀の場合は焼くと酸化膜が張るため、希硫酸で2〜3分煮て、重曹で洗浄し、脱イオン水で洗ったあと、乾燥させて表面を化学的に安定させます。 このように下準備を行ったベース板を10数枚用意し、次に最初の色の絵付けを行います。
 最初の色の絵付けが終わると、十分乾燥させてから、800度前後に微調整した電気炉で焼き入れを行います。 この焼き入れ温度は、その日の気温や湿度によって調整しますが、このような気温、湿度だったら何度、というようなマニュアルは一切無く、職人の経験に基づく勘がたよりです。温度がうまく合わなければ、発色が悪かったり、ひび割れができたりしてしまいます。
 焼き入れ後に自然に冷めるのを待ち、この段階で予想通りに発色したものだけ次の「キサゲ仕上」工程に回します。 この工程では焼き入れの途中で飛び散った釉薬や酸化物などを、キサゲという工具を使用して、丹念に取って行きます。
 最後に水に浸しておいた炭で磨きます。 このあと、脱イオン水で洗浄して十分乾燥させ、二回目の絵付けに入ります。 一回目と同じように、絵付け、乾燥、焼き入れ、磨き、水洗い、乾燥を行い、色をのせて行きます。
 ここで、片面のみに釉薬をのせて焼くためにおこる、「焼き反り」が出るため特殊な治具を使用して、その都度修正します。 最も難しいのは、1つの枠内に複数の色を使い、グラデーションを入れて行く「盛り合わせ」という作業です。
 先にある色をのせておき、そのあと2色目をのせた瞬間、にじみが出るのですが、そのにじみが、多すぎても、少なすぎてもだめで、微妙な筆使いが求められます。
 各工程ごとにチェックが入り、最終的に製品として合格するのは、十数枚用意したベースのうち2枚程度で、月産50枚程度が限度です。これだけ手間がかかっているので高額になるのは仕方の無いことで、庶民には高嶺の花となっています。(バルカンから発売されているクロワゾネダイアルのシリーズは200万円以上します) しかし唯一日本で、25万円程度で手にいれることができます。 それは、シェルマンのワールドタイムミニッツリピーター クロワゾネダイアルで、バーゼルフェア2002年にデビューして現在も販売されています。 ネット通販もされていますので、一度ご覧になってみてはいかがでしょうか?

シェルマン ホームページ http://www.shellman.co.jp

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第18回 なぜロレックスは人気があるのか その3

 ロレックスはオイスターケース等の外装部品のほかに、画期的な内部機構を開発しています。 それがパーペチュアルと呼ばれる両方向自動ぜんまい巻き上げ機構と、瞬時に日付が変わるデイトジャスト機構です。
世界で初めて自動巻き機構を発明したのはアブラハム・ルイ・ペルレで1770年のことです。 そして、1924年にジョン・ハーウッドが自動巻き機構を組み込んだムーブメントで特許を取得しました。 この時の自動巻き機構は手の動きに合わせてハンマーが左右に振れることでぜんまいを巻く「ハンマーワインディング方式」でした。 その後さまざまな方式が実用化されました。
ロレックスも自動巻きムーブメントを模索していましたが、どの方法も満足のいくものではなく、ついに自社で新たな自動巻き機構を開発しました。
 ロレックスが考案したのは、ローターが360度回転して動力を貯えることのできる「ローターワインディング方式」でした。 自動巻き機構といえば、誰もがこの「ローターワインディング方式」を思い浮かべると思いますが、実はこの方式を最初に実用化したのはロレックスだったのです。この方式は1932年に「パーペチュアル」として商標登録されました。そして1933年には特許も取得しています。 ここで特筆すべきは、他の自動巻き機構に比較して2倍の巻き上げ効率を達成していたことです。
 さらに50年代に入って、ローターがどちらに回転してもぜんまいが巻き上がる両方向巻き上げ機構を開発し、以後、この方式が世界の自動巻きムーブメントのスタンダードになっています。
 また、ロレックスは長時間駆動させられるよう、ぜんまいにも工夫を凝らしました。 現在一般の自動巻きムーブメントが、ぜんまいをフルに巻上げた状態で40時間程度稼動しますが、ロレックスは50〜70時間動きます。 ぜんまいを収める「香箱」を大きくすることは構造的に難しく、(ケース全体の大きさに関わってくるため)ロレックスはぜんまいを薄くして長さを確保することで実現しています。 金属を薄くすれば当然、耐久性が低下しますが、ロレックスは素材を改良することで解決しています。
 もう1つのロレックスの発明であるデイトジャスト機構は1945年に特許をとっています。 機械式時計メーカーにとって、デイト機構は、
最もトラブルの起き易い部分です。 連続で動く針に対して、デイトは1日分だけ送る間欠送りになります。 デイト機構は通常、日付の描かれた回転板を夜中0時近辺で、徐々に回転させて次の日付を表示させます。 針駆動部と同じばねでギアを駆動するため、日付更新の間に駆動力を消費したり、針の動きが遅くならないように、通常はできるだけ時間をかけて日付更新を行います。 (安価なデイト付自動巻き時計では、日付が変わりきるのに、1時間以上かかるものもある)ロレックスはカレンダーホイールに設けられたカムと強力なヨークスプリングで瞬時のデイト切り替えを可能にしました。 これには非常に高度な技術が使われているのですが、驚くべきことは、この機構が初登場からすでに量産品であったということです。 耐久性や精度だけでなく、あらゆる機構にも究極を求め、それを実現してゆき、さらにそれを量産してしまうロレックスにあらためて脱帽です。


第17回 なぜロレックスは人気があるのか その2

 前回(その1)も述べたとおり、ロレックスが設立された20世紀初頭、多くの時計ブランドは、精度向上や華美な装飾で顧客を獲得しようとしていましたが、ロレックスは、実用性を追求するため、完全防水の実現を目指しました。その結果、ロレックスの顔とも言える、オイスターケースの開発に成功しました。 オイスターケースは金属塊をくり抜き、潜水艦のハッチと同様の構造を持たせることで、高い気密性を確保しています。 また、ねじ込み式裏蓋とゴム製のOリングの組み合わせにより、世界最高の防水性能を確保しています。
ロレックスはケースに使用する材料を吟味し、良質な材料を開発すると同時に、一般のメーカーでは、数回しかプレスしないところを、最低でも16回以上、プレスし、金属の密度を高め、耐久性を飛躍的に向上させています。その一方で素材が硬くなるため、加工が非常に困難になります。 しかしロレックスは、他社に真似のできない高い加工技術により、最高の加工精度と丁寧な仕上を実現しています。 当然コストは上がりますが、「完全な防水性」を実現するための妥協のないロレックスの姿勢が伺えます。
 完全防水に対するロレックスのこだわりは裏蓋にも現れています。 通常ねじ込み式の裏蓋は、開閉器具を引っかけるための窪みが、対称に偶数個付けられていますが、その窪みにより、裏蓋の厚みが不均一になります。また、工具を使用する際も、その部分のみ力が加わることになります。メンテナンスの際、裏蓋を何度も開閉することにより、工具の力が不均一にかかり、蓋に歪みが生じ、防水性能が損なわれる危険があります。
 そこでロレックスは、裏蓋の全周に均一に細かい刻みをつけ、裏蓋全周にすっぽりかぶさる専用の工具で開閉するようにしました。 ロレックスの高い加工技術があってこそ可能であったことですが、これにより、裏蓋の厚みが均一になり、工具の力も均一に加わるようになったため、裏蓋に歪みを生じにくくなり、防水性能の向上になったことと、さらに他者が勝手に裏蓋を開けられなくなり、メンテナンスを自社できちんと管理された状態で行うことが出来るようになりました。 さらに、1952年に特許を取得したばね仕掛けのねじ込み式リューズ「トリプルロックリューズ」により、防水性能が強化されました。 これは時計を操作するためにどうしても強固なオイスターケースに穴を開ける必要があり、その穴からの浸水を防ぐためのアイデアでした。ねじ込み部分にばねでテンションをかけて、リューズが簡単に緩んでしまわないようにしています。 また、リューズの両脇にリューズガードが設けられ、リューズが何かとぶつかって変形し、防水性能が損なわれてしまうことを防止しています。
 耐久性の追求はブレスレットにも及んでいます。 スポーツタイプに使用されるオイスターブレスはケース同様に金属塊より削り出し、堅牢性を高めるとともに、厚みや質感、存在感を最高の加工技術により優美に見せています。
また、文字盤の色、書体、蛍光インデックスの位置と大きさ、針のデザイン、太さなど徹底的に考慮して、最高の視認性を追求しています。こうした品質および信頼性の向上により、ロレックスは世界のトップブランドとして認められるようになっていったのです。


第16回 なぜロレックスは人気があるのか その1

 今日、世界で最も有名で人気の高いブランドはロレックスです。
高級時計に興味のない人でもロレックスの名前は知っています。 なぜこれほど有名になったのでしょうか?
  ロレックスが誕生したのは、1905年です。当事、パテック、ブランパン、ヴァシュロンなどロレックスに比べて100年以上の歴史を持つ老舗の高級時計ブランドがひしめく中で、ロレックスは一介の新興ブランドに過ぎませんでした。 そんなロレックスが僅か1世紀で世界のトップにのぼりつめた理由はいったい何なのでしょうか…?

 時計の専門家の多くは、「ロレックスは先見性を持っていた」と考えています。その先見性とは、20世紀初頭、高級腕時計は一部の富裕層のコレクションもしくは玩具的存在でしかなかった時代に、いずれ、より多くの人に真に実用に耐える時計が求められる時がくると考え、耐久性や視認性を重視した時計を世界に先駆けて開発したことに尽きます。 まさに実用性を探求することそのものが、ロレックスの歴史なのです。では、その実用性とは、どのようなものなのでしょうか?
  なぜロレックスは人気があるのか?

 あまりにもメジャーになり、見慣れてしまったロレックスのデザインですが、その製造方法、内部の機構は、発明の宝庫であり、特許の塊となっています。
現在ではあたりまえの防水機能も、世界で初めて完全防水を実現したのは、
ロレックスのオイスターケースで、1926年に特許を取得しています。また、その防水性を補完するため、ネジ込み式リューズ、トリプルロックリューズを開発し、1952年に特許を取得しています。新興ブランドであるロレックスが世界的な成功を収めるためには、他社との差別化が必要でした。 そして、ロレックスは当時他の時計ブランドが着手していなかった「完全な防水機能」の実現に賭けたのです。
 それがオイスターケースの開発でした。 通常、時計メーカーや部品メーカーは、時計のケースを製造する場合、鋳型を起こして、溶融させた金属を流し込む方法をとります。 この方法は、迅速に同質のケースを大量生産することが可能であり、またデザイン変更があっても、製造工程を変更する必要がないため(鋳型のみの変更で済む)コストダウンが見込めます。しかし、ロレックスは金属塊よりくり抜く方法で、オイスターケースを製造しました。 金属板よりベースをくり抜き(右図)、何段階もプレス成形し、機械加工を経て、仕上られます。 この方法をとることで、材料に継ぎ目や、鋳込み製法につきものの内部欠陥が無い、高い防水性を誇るケースが製造できます。
しかし、設備投資が膨大になること、プレス成形に非常に高い技術力が必要なこと、デザイン変更が大変であることが、これの欠点です。
オイスターとは、英語で「牡蠣(カキ)」のことで牡蠣の殻のように強固であるということから、ネーミングされ、特許取得と同時に商標登録もされています。 現在でこそ、このオイスター方式は、高級時計のケース製造方法として当たり前になりましたが、これを最初に考案し、実現したのは、ロレックスです。
 このことからも、ロレックスは先見性を持っていたことがわかります。

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第15回 ロレックスのリファレンスナンバー

 ロレックスには、本体にリファレンスナンバーとシリアルナンバーが必ず刻印されています。 リファレンスナンバーは本体の12時側にあり、4桁(旧型、廃盤モデル)、5桁(現行定番モデル)または6桁(ここ1〜2年の新型モデル)で表されています。 リファレンスナンバーは付け方に法則があり、そのナンバーから時計の種類、ベゼルの種類、ケース素材などがわかります。 ただし、リファレンスナンバーが4桁(旧型、廃盤モデル)のものは、この法則が当てはまらないものが多く、現行モデルでも一部当てはまらないものがあります。
(特にスポーツタイプ)
時計の種類
5桁のうち、最初の2桁(6桁の場合は最初の3桁)で時計の種類を表します。
114,14:オイスターパーペチュアル ノンデイト
15 : オイスターパーペチュアル デイト クロノメーター
116,16 : オイスターパーペチュアル デイトジャスト クロノメーター
17 : オイスタークォーツ デイトジャスト
118,18 : オイスターパーペチュアル デイデイト
19 : オイスタークォーツ デイデイト
76 : オイスターパーペチュアル ノンデイト レディース
77,67 : オイスターパーペチュアル ノンデイト ボーイズ
78,68 : オイスターパーペチュアル デイトジャスト ボーイズ
179,79,69 : オイスターパーペチュアル デイトジャスト レディース

ベゼルの種類
5桁のうち、4桁目(6桁の場合は5桁目)でベゼルの種類を表します。
0 : ポリッシュドベゼル(エクスプローラーT、エアキング等)
1 : ファイリーエンジンターンドベゼル
2 : エンジンターンドベゼル
3 : フーテッドベゼル(ビジネスモデルで最も使用されているギザギザベゼル)
4 : 手彫りベゼルなど
5 : ピラミッドベゼル
6 : 回転ベゼル(ターノグラフ、サンダーバード等)

時計の種類により、組み合わされるベゼルは決まっており、たとえば、エクスプローラーTにポリッシュドベゼル以外のベゼルが付くモデルは存在しません。 また、スポーツモデルは独自の番号をとっているため、このベゼルの番号区分はほとんど当てはまりません。(例えばサブマリーナデイトは回転ベゼルであるのに4桁目は「1」になっています)
 また、ボーイズ、レディースのフーテッドベゼルモデルでは「7」になっており、イレギュラーが多い区分のようです。

ケース素材の種類
5桁のうち、5桁目(6桁の場合は6桁目)はケースの素材を表します。
0 : SS(ステンレススチール)
2 : ロレジウム(SSケース+Ptベゼル+Pt文字盤)
3 : SS+YG(SSケース+YGベゼル、例:16233)
4 : SS+WG(SSケース+WGベゼル、例:69174)
5 : PG(K18ピンクゴールド)
6 : Pt(プラチナ)
8 : YG(K18イエローゴールド、例:179178)
9 : WG(K18ホワイトゴールド、例:118239)

以上、紹介したリファレンスナンバーは、定番モデルに適応されていますが、スポーツモデルをはじめ、イレギュラーも多く存在しますので、この法則に合わないからといって、それが偽造品であるということにはなりません。
 あくまで、目安の1つとして考えてください。


第14回 ロレックスのシリアルナンバー

 ロレックスには、本体にリファレンスナンバーとシリアルナンバーが必ず刻印されています。
  ロレックスのリファレンスナンバーとシリアルナンバーを見るには、本体よりブレスレッドを外さなければなりません。本体よりブレスレッドを外すには、バネ棒はずしという器具を使います。または、細い時計ドライバーや、バネ棒を通している部分に横穴のあいているタイプは、長めのピンで代用することもできます。多少こつのいる作業になりますので、自信の無い人は、時計屋さんなどに頼むとよいでしょう。
 また、保証書が付いている場合は、その保証書に必ず、リファレンスナンバーとシリアルナンバーが記載されていますのでそれを参考にしてください。

 シリアルナンバーは本体の6時側にあり、各時計1個1個固有の番号です。このシリアルにより、その時計のおおよその製造年がわかります。
 現在のシリアルナンバーは数字だけ、もしくは1桁目がアルファベットを含めての7桁で表されています。(6桁以下のものは、1964年以前の製造になり、通常では我々が目にすることはありません)
 シリアルナンバーが数字だけのものは1986年以前の製造になります。
 1980年は、6434000より始まります。 82年は、7386000、84年は833800、86年は9290000より始まります。
 シリアルの1桁目にアルファベット(最初はR)がつくものは87年からになりますが、87年でも数字だけのシリアルも存在するようです。
 以後、87〜88年がRにかけて、89〜90年がL、90〜91年がE、そして91年中にE,X,Nの3つが確認されています。 これらを並べるとR、(O)、L、E、X(オーは数字の0と間違え易いため飛ばしたと思われる)と読めるのが面白いですね。
 N以後、毎年アルファベットが変えられていますが、並び方はバラバラで、94、95年などWが2年連続で使用されたりと、以後の法則はないようです。
 ちなみに、92年がC、93年がS、96年がT、97年がU、となり98、99年はAを2年連続使用、2000年はPになっています。2001年のK番台より一部スポーツタイプのサファイアガラスにレーザー彫りの透かし王冠マークを6時位置に入れるようになり、2003年のF番台では全機種に透かし入りサファイアガラスが採用され、偽造防止に役立っています。
 サファイアガラスに関しては、透かしの入っていない古いものでも、日本ロレックス社に交換依頼をすれば、透かし入りのものに変えてくれます。(ただし、始めからサファイアガラス使用の機種のみ、交換費用3万円くらい)
 2004年もFが連続使用され、2005年よりDに変わっています。
 シリアルナンバーが示すのは、あくまでロレックス社で製造された年であり、保証書に記載される、保証開始年月日(購入日)とは、年が1年程度後になる場合があります。(その間は、問屋や時計店の在庫として眠っていた)
 しかし、だからといって、保証期間が短くなるとか、故障し易いとかいうことはありませんので、安心してください。


第13回 新世代のクォーツ時計

 安価でありながら、正確無比に時を刻みつづけるクォーツ時計ですが、唯一の弱点が、電池寿命の問題です。 機械式では、止まってもゼンマイをきちっと巻いてやれば再度動きますが、クォーツ式は電池が切れてしまえば、電池を新しいものに交換しない限り動きません。 通常電池の寿命は2〜3年位です。(最近は消費電力を抑えたムーブメントを使用することにより、10年もつものもあります) 高級時計などは裏蓋を開けるのに特殊な工具を必要とするものもあり、電池交換は以外とわずらわしいものです。
 この問題を解決したのが、セイコーのキネテックに代表される自己発電型クォーツ時計、そして太陽電池を使用したシチズンのエコドライブ、カシオのタフソーラーなどです。
 セイコーのキネテックは自動巻き式のローターによるゼンマイの巻き上げ機構を発電用に応用したものです。 自動巻き式と同様にローターが回転すると、それが歯車を介して約100倍に増速されて、発電ローターを超高速で回します。この発電ローターと発電コイルとの間に電磁誘導による電気が発生します。その電気はキャパシター(蓄電用コンデンサ)に貯えられて、時計を駆動するエネルギーになります。 最初のうちは、フル充電で2〜3日ぐらい稼動する程度しか充電されませんでしたが、消費電力の省力化や、キャパシターの改良、不使用時の省エネモード等の採用により、フル充電で6ヶ月以上稼動するようになりました。 キネテックは1986年にスイスのバーゼルフェアで参考出品されて、世界の時計界に大きな衝撃を与えました。 そして1988年にドイツで先行発売され、続いて日本でも発売され、現在セイコーの主力商品となっております。
 太陽エネルギーを利用することで電池交換を不要にしたのが、シチズンのエコドライブ、カシオのタフソーラーです。 こちらは、当初アナログ式より消費電力の少ないデジタル時計で実用化されました。 一度フル充電しておけば、光を当てなくても3〜6ヶ月くらい動き続けます。こちらも当初は、時計の全体の1/3から1/2を太陽電池が占めていましたが電池の小型化や、透光文字盤、極細太陽電池の開発等により、太陽電池の配置をあまり気にせず、自由な時計のデザインができるようになりました。
 太陽電池でフル充電に要する時間は、一般的な蛍光灯のついている部屋においた場合、約175時間(照度700LUXとして)、快晴の野外で太陽のもとで、約3時間(照度10万LUXとして)が目安となります。
 キネテック、エコドライブ、タフソーラーなどの充電式に共通する注意事項があります。 それはキャパシタ、蓄電池を完全に放電してはいけない、ということです。 いくら省エネでも、1年もほおっておかれれば、電池は完全に放電してしまいます。 そうすると蓄電池が劣化してしまい、次に充分な蓄電ができなくなります。 すると普通に使用しているにもかかわらず、1日2日放置しただけですぐに時計が止まってしまう場合があります。
 長期間使用しない場合でも、定期的に動かし、太陽に当てて充電することを心がけてください。 とくにアナログ式のものは消費電力が大きいため、再充電する時は、リューズを引いて針の動きを止めて、消費電力を極力減らして、たっぷり充電することが必要です。

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第12回 クォーツ時計の歴史

 クォーツ時計が発明されたのは1927年です。 しかし、この時まだ集積回路が実用化されていなかったため、電子回路を真空管で構成していました。そのため、高精度は実現されたものの、時計全体の大きさが部屋1つ分に相当するほど大きくなってしまいました。 1958年 精工舎(現セイコー)がタンス大の放送用クォーツ式時計を商品化し、64年には15cm角位のポータブル卓上クォーツ時計を発売しました。 この時点で、クォーツの振動子は全長10cmの真空管に、電子回路はトランジスタ、ダイオードを使用したものにまで小型化されていました。 しかし価格は約13万円と当事の大卒初任給の半年分にあたり、とても庶民に手の出るものではありませんでした。
  そして1969年、ついに世界初のクォーツ式腕時計「セイコー アストロン」が発売されました。 K18モデルが45万円、SSモデルが17万5千円でまだまだ高価でしたが、71年から73年にかけて相次いで新モデルが発売され、安定した品質と庶民にも手のとどく低価格化の実現により、5年間で70万個以上が生産されました。 クォーツ時計は瞬く間に、全世界に広がり、機械式時計を中心としていたスイス時計産業に大きな打撃を与えました。
 70年代半ばには、クォーツ時計は、時計の主流として確固たる地位を築き、これまで時計業界を席巻していたスイスに代り、セイコーの名が世界のブランドとして認知されるようになりました。
 この頃からクォーツ振動子の小型化、電子回路の低消費電力化などの技術革新により、一層の小型化、薄型化が可能になりました。ファッションの観点から、とくに薄い時計に対するニーズは高く、正確な時刻を表示することに加えて、アクセサリーとしても通用する美しい時計を創り出す風潮が芽生えました。 そして1975年に女性用の薄型ドレスクォーツが発売されました。 極めつけは1989年にムーブメントの厚みが1mm以下の超薄型ドレスクォーツが発売されています。
 小型化、薄型化と同時に、精度向上および多機能化も進みました。機械式の精度が、日差で表されるのに対して、クォーツの精度は、月差から年差へと驚異的な速さで進化し、省エネによる電池寿命の延長、耐磁製の強化など、精度はもちろんのこと高性能、高品質で耐久性の高いクォーツムーブメントが開発されていきました。 そして様々な用途、ダイバー向け、パイロット向け、鉄道用、視覚障害者用などとして商品化されました。
 また、クロノグラフ、永久カレンダー、デュアルタイム、ワールドタイム、スプリットセコンド、カウントダウンタイマーなど様々な機能を持ったクォーツ時計が登場しました。
  現在レーシングスポーツ、マリンスポーツなど各種のハードなスポーツにも耐える頑丈なムーブメントとボディ、そしてそれぞれのスポーツに要求される各種機能をそなえたモデルが多数発売されています。


第11回 クォーツ時計について

 現在、世界で生産されている時計の90%以上はクォーツ時計です。
  一般にクォーツ時計は安価なものとして扱われており、時計専門雑誌でもあまり評価されていないようです。 確かに、精巧な工芸品のように職人が組み立てる機械式と違って、クォーツムーブメントは工場で機械により大量生産されているものがほとんどのため、単に時間を知るための道具として見なされてしまうのは、しかたのないことかもしれません。しかし、多くのデザイナーブランドでクォーツ時計をラインアップしており、カルティエ、ブルガリの場合、同じデザイン、同じサイズでクォーツ式と機械式を揃えています。 価格もあまり変わらないことから、クォーツ式と機械式を同格に扱っていることがわかります。 また、グッチ、エルメス、ショパールなどのように、クォーツ式の割合が圧倒的に多いブランドや、クォーツ式しか製造していないブランドも数多くあります。
 クォーツ式の利点は、なんといってもその精度です。クォーツ時計の精度は、平均月差(1ヶ月の進み、遅れ)が0.3〜1.5秒となるのに対し、機械式は平均日差(1日の進み、遅れ)が10〜20秒で、クォーツ式は機械式の500倍以上の正確さを持っています。
 また、小型、薄型にでき、時計のデザインの自由度が大きいことも利点です。外周をダイアの駒が動くショパールのハッピーダイアモンドはその代表で、クォーツムーブメントでなければ、実現できなかったでしょう。
 そして電池が切れるまで動き続けるため、メンテナンスフリーであることも大きな利点です。
機械式では、ゼンマイをフルに巻いても 36〜48時間で止まってしまいます。手巻きなら、毎日ゼンマイを巻く必要がありますし、自動巻でも、毎日8時間程度は腕に着けていなければなりません。休みに時計を1日しなかったら、止まっていたということもよくあります。当然、再度時刻合わせ、日付合わせが必要になり、メカに弱い人にとっては大変で憂うつな作業になります。 また、よくわかっている人でも朝の忙しい時に、時刻合わせなど、ゆっくりやっていられないでしょう。そういう点では、クォーツ時計は大助かりです。 最近はエコ意識の高まりから太陽電池や自動巻と同じ方式で発電して蓄電池にため込む方式など、電池交換不要なクォーツ時計も出ています。
 クォーツ時計の原理ですが、人工クォーツ(酸化シリコン)の単結晶に電圧をかけると、非常に高く安定した周波数で振動することを利用し、その周波数を電子回路で処理して1秒間に1回のパルスに変換し、ステップモーターを回転させて、針を駆動するというものです。アナログ(針表示式)クォーツ時計の場合、ステップモーターより先の構造は機械式時計とまったく同じです。 よく、機械式時計と比べてクォーツ式時計は針がピッピッと1秒ずつ飛んでゆく、といわれますが、それはステップモーターの特性によるものです。
 クォーツ時計の場合も、モーターより先の構造が機械式時計と同じなのでオーバーホールが必要ですが、電池交換以外は行われていないのが現状です。
 理由としては、ステップモーターが極めて正確なので、オイルの劣化による抵抗が増えても、時間の遅れがほとんど無いこと、ムーブメントの価格が安いため故障してもムーブメントそのものを交換する方が、分解修理するより確実で安上がりなこと、などがあげられます。
 ファッション時計の場合、修理するより新しい時計を買ったほうが安いこともあります。


第10回 オーバーホールについて

 皆さんは時計のオーバーホールをしていますか?
車をお持ちの方は、2年ごとに車検を受けるのはご存知だと思います。時計にとってのオーバーホールは、車にとっての車検と同じです。車の場合、整備不良は命に関わってくるため車検が法律で義務付けられていますが、時計も整備不良になれば、時間が狂ったり、動かなくなったり
します。 ですから、オーバーホールは大切な時計を長く愛用するためには絶対に必要なものです。
  オーバーホールとは簡単に言えば、時計を分解して手入れすることです。車の場合は、オイルの入れ替えやブレーキパッドの点検等が行われますが、機械式時計の場合は、部品1つ1つに完全に分解して、洗浄し、再組み立て、注油が行われます。 もちろんその過程で分解した部品の状態、動作状況、精度確認など、様々なチェックが行われます。
 数多くの部品から成り立っている機械式時計の場合、機械が動けば必ず金属の磨耗が起こります。 もちろん磨耗を防ぐために、稼動部にはオイルが塗布されていますが、完全に磨耗を防ぐには至らず、微細な金属片がオイルに混入してゆきます。 これがオイルを劣化させ、さらに古くなったオイルはべとべとに固まって、機械の動きを阻害し、故障の原因にもなります。そこで機械の耐久性を高めて精度を維持してゆくために、汚れたオイルを奇麗に除去して、新しいオイルを塗布します。 これがオーバーホールの最も重要な役割なのです。
 オーバーホールの手順は、ケースやブレスレットなどの外観チェックから始まります。 分解作業は、各部品の状態を見ながら慎重に行われます。不良個所が見つかればその都度、修理または部品交換をしてゆきます。全ての分解、不良個所の修正が終われば、洗浄作業に入ります。
 ムーブメントの洗浄は、ケース、ブレスなどの外装部品とは別に、専用の自動洗浄装置で行われます。 洗浄が終わり、十分に乾燥させたあと、組み立てが始まります。 これも洗浄と並んで重要な作業です。必要な個所に、必要な量のオイルを注油しながら(多すぎても少なすぎてもダメ)、なおかつ部品と部品の隙間の微調整を行いながら組み立てて行きます。そして、テスターを使った精度チェックや、防水性能のテストおよび最終調整を行い、オーバーホールは完了します。 オーバーホールに要する時間は、特に問題の無い場合、時計の分解、洗浄、組み立てに2〜3日、精度チェックに4〜5日かかり、トータルでどんなに早くても10日程度かかります。
 精度チェックで問題が出たら、再度微調整を行い、ときには再度分解する場合もあります。 また混んでいる場合、すぐに作業にかかれないこともありますので、そうした余裕も含めて、どこの時計店、メーカーでもだいたい1〜2ヶ月位の納期をいってくるのが普通です。 また、クロノグラフなどの複雑機構をもつ機種は3〜6ヶ月位かかる場合もあります。
 一般にオーバーホールは3〜5年に一度の目安で行うべきです。長い間、オーバーホールしないでおくと、汚れや磨耗によって故障が起き易くなり、修理やパーツ交換の費用なども、オーバーホールよりずっと高くついてしまう場合があります。
 ロレックスの場合、2〜3年毎にオーバーホールを行えば、30〜40年は十分にもちます。 オーバーホールの料金は、各店舗やオーバーホールする時計のブランドや型式、部品交換の有無等で変わってきますので、作業を進める前に、見積もりを出してもらうほうがいいでしょう。
 ロレックスで3針モデルの場合、2〜3万円位が相場です。 デイトナなどのクロノグラフモデルの場合、5万円以上することもあります。
機械式時計を購入する場合は、オーバーホールの費用のことも考えて決断をしてください。

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第9回 ダイバー時計について

 今回はスポーツウォッチのなかで最も人気のあるダイバー時計について説明したいと思います。
 空気のない海中における活動をサポートするダイバー時計は、ダイバー達にとって必携のツールです。 命にかかわるボンベの空気の残量を知る目安となる潜水時間の経過を示すダイバー時計は、いわば命綱です。そのため実際に潜水に使用できるダイバー時計は、ISO(国際標準化機構規格)とJIS(日本工業規格)の双方でそのスペックが厳密に定義付けられています。
 必須前提条件は
「少なくとも100mの潜水に耐え、かつ時間を管理するシステムを持つ時計」
「潜水能力の1.25倍の圧力に耐える耐圧性があること」 の2点です。
  また要求事項として
「誤動作防止機能付き回転ベゼルを備えていること」
「暗所で25cmの距離から時刻や作動状態が認識できること」
「濃度が3%の食塩水に24時間放置しても異常がないこと」 が定められており、これらをクリアしていないと、ISOやJISでダイバー時計として認められません。
 一般的なダイバー時計は、回転ベゼル、ねじ込式リューズ、エクステンションのついたブレスもしくは、伸縮性のあるラバーベルトを備えています。そのなかで、ねじ込式リューズは必須のものでしょう。 防水200mといってもあくまで静水圧の中での話なのです。 例えば波打ち際で、波に揉まれたり、泳いでいて時計を水面に強く打ち付けたりした場合、瞬間的に20気圧以上に相当するG(重力)を受けることがあります。 するとそのショックで瞬間的にリューズが浮き上がり、内部に水が進入してしまう可能性があります。 ねじ込式リューズはそうした事故を防止するものです。
 ダイバー時計の元祖といえば、ロレックスのサブマリーナとオメガのシーマスターが挙げられるでしょう。 サブマリーナは初の回転式ベゼルを搭載したモデルとして1953年に登場し、自動巻きのダイバー時計の超定番として現在に至ります。 バリエーションとしてガスエスケープバルブを装備し、より深い潜水を可能にしたシードウェラーがあります。
 一方のシーマスターの初代は1948年の登場で、自動巻き、クォーツ、クロノグラフ付、ガスエスケープバルブ付など、スペック、価格で豊富なバリエーションがあり、素潜りの世界記録を樹立したジャック・マイヨールとのコラボレーション等もあります。
 しかしながら、ロレックスやオメガは、プロダイバーの方は陸上でされることは多いのですが、仕事現場では、ほとんど使用されていません。 セイコーのクォーツ式ダイバーや、カシオ、スントなどのデジタル式ダイビングコンピューターが席巻しています。 これはプロダイバーの仕事が多様化して単に時間経過がわかるだけでは機能不足なことと、何十万円もする高額な時計を過酷な環境に持ち込むのは忍びない、ということだと思います。海水の塩分は時計にとっては極めて有害なのです。ですから、ダイバー時計を海でした後は、必ず水洗いして、海水を落としてください。 海で使用できるのは短時間に限られます。いくらステンレス製であっても海水が付いたままで長時間放置すれば、錆が発生することもありますし、パッキンも痛みます。 ダイバー時計を海で使用できるのは、あくまで時計が完全な場合に限ります。 メンテナンスを怠れば、使用中に故障して命に関わる場合も出てきます。
 万が一、内部に海水が入り込んだと思われる場合は、即オーバーホールに出してください。 ほおっておくと2,3日で内部が錆びてしまい、完全に使い物にならなくなってしまいます。 そうなった場合、買い換えた方が安いかもしれません。


第8回 メイド イン ジャパン

 高級時計というと皆さんはどこの国を思い浮かべるでしょうか?
 まず、出てくるのはスイスでしょう。 多くの有名な時計ブランドがスイスで創立され、また本社をスイスにおいています。
 雲上ブランド(超名門高級ブランド)のパッテックフィリップ、ヴァシュロンコンスタンタン、ブランパンを始め、オメガ、タグ・ホイヤー、ブライトリング等、よく耳にする高級時計メーカーはほとんどスイス創立です。
 最も有名なロレックスは、意外にも創立はイギリスですが、後に本社をスイスに移転しています。また母体が宝飾ブランドのカルティエはフランス、ブルガリはイタリアと、高級時計で最近日本のメーカー名は全然出てきません。

  日本の代表的時計メーカーのセイコーは、1969年に世界初のクォーツ時計を販売し、
スイスの時計産業に「クォーツショック」を引きおこしました。
 時間に正確でしかも安価なクォーツ時計の出現により、高価な高級機械式時計中心のスイス時計産業界は大きな打撃を受け、多くのメーカーが倒産、事業縮小、あるいはクォーツ時計製造への転換を迫られました。
 今日でも世界で製造される時計の90%以上はクォーツ時計であり、多くの時計専門誌で取り上げられている高級機械時計は、ほんの数%にすぎません。
 しかし、そうした時計専門誌で、セイコー、シチズン等の国産の時計が大きくとりあげられることはあまりありません。 また、高級機械時計で国産をお求めになる人は非常にに少ないのが現状です。
 海外で、セイコー、シチズンは人気が高いのに、残念なことです。

でも、人気の海外ブランド高級機械時計に使われている一部のパーツがメイド イン ジャパン で占められているのを、皆さんはご存知でしたか?
 そのパーツとはサファイア風防(針、文字盤を保護するガラス)です。時計に使用されている風防には、おおまかに分けて、プラスチック製、ミネラルガラス製、サファイアガラス製の3つがあります。
 高級機械式時計は、ほとんどがサファイアガラスを採用しています。サファイアガラスとは、無色透明の合成サファイアで作られたガラスのことで、ダイアモンドのつぎに硬く(硬度9)傷つきにくい反面、加工が非常に難しく品質管理が大変のが難点です。
 このサファイア風防を、日本の信光社というメーカーが全世界の50%を製造しており、海外の2次加工メーカーを通じてスイスの高級時計全体の約3割、また国内はほぼ独占しています。日本で最も人気のあるロレックスもここのサファイア風防を使用しているといわれています。
 不純物、欠陥を含まない無色透明な合成サファイアを作ることは難しく、さらに棒状の合成サファイアをスライスして、均一な円盤状にする特殊な技術を持つメーカーは世界に数社しかないと言われています。その1つが日本のメーカーであるということは非常に嬉しい限りです。

 また、機械式時計に無くてはならないテンプの振動を制御するヒゲゼンマイというパーツは、世界でヒゲゼンマイ専門メーカーのニヴァロック社(スイス)と日本のセイコー、この2社でしか製造していません。 セイコーはクォーツの登場とともに、一時ヒゲゼンマイから撤退していましたが、90年代に復活し自社のグランドセイコー等に搭載しています。 現状では、セイコーの占める割合は低いと思いますが、そのうち高級機械時計の半分はセイコーのヒゲゼンマイを使うようになるかもしれません。
 あまり知られないところで頑張っているメイド イン ジャパン をもう一度見直してみてはいかがでしょうか?


第7回 機械式時計の精度について

 機械式時計をはじめて持たれたお客様から、すぐに止まる、時間が狂う、というお話をよく聞きます。
 特に、高価な高級機械式時計をわざわざ買ったのになぜだ?とよく言われます。これは、クォーツ時計に慣れた人にとっては仕方の無いことです。クォーツ時計は動力が電池のため、電池が切れるまでは、使用せずにほおっておいても動き続けます。
 しかし機械式はゼンマイを動力とし、ゼンマイをフルに巻き上げても通常48時間程度しか持ちません。自動巻きでもずっと腕に付けて振ることにより動力を与え続けなければ、やはり48時間程度で止まってしまいます。
 クォーツ時計の精度は、平均月差(1ヶ月の進み、遅れ)が0.3〜1.5秒となるのに対し、機械式は平均日差(1日の進み、遅れ)が10〜20秒で、最大の場合、月に5分程度時間が狂う(1分程度はあたりまえ)ことになります。
 どんなに高価な機械式時計であっても、どれほどシビアに調整したとしても、安価なクォーツ時計よりも大きな狂いが生じます。(いくら機械式時計であっても、正しい使い方をしているのに1ヶ月に10分も20分も狂う様では異常ですので、時計店でメンテナンスしてもらいましょう。)
 そこで、機械式時計というものはどういったものなのか、なぜそうなるのかを説明し、理解して頂きたいと思います。機械式、クォーツ式に関わらず、針を回転させる機械のことを専門用語でムーブメントと呼びます。
 機械式時計のムーブメントは基本的にゼンマイを動力として、振り子の原理を使ったテンプとガンギ車によって針に繋がる歯車を一定の速度で回転させます。このテンプは毎時1万8千回〜3万6千回振動して、それを歯車で減速して、長針、短針、秒針にそれぞれ伝えます。テンプの振動数は一定ですが、メーカーやムーブメントによりその数は異なります。振動数が高いほど精度の高いムーブメントです。(例:ロレックス 28800回、カルティエ 21600回、ゼニス36000回 等)このテンプの振動数が完全に安定していれば、時計は極めて正確に時を刻みます。
 クォーツ時計はこのテンプの振動の代りに、クォーツに電圧をかけたとき発生する非常に安定した電気パルスを使用しています。このパルスを電子回路に流してステップモーターの駆動をコントロールして針を回転させています。このクォーツのパルスは、毎秒32768回=毎時1億1796万4800回となり、テンプの振動数の6553倍にもなります。まずこの違いが機械式とクォーツ式の精度の差になります。
 また、クォーツのパルスは時計の姿勢がどのようになろうと、常に一定です。しかし機械式は、時計の姿勢が変われば、テンプにかかる重力の方向も変わるため、テンプの振動数が影響を受けます。
 また、激しく腕を振った場合も時計に遠心力がかかり、テンプの振動数が影響を受けます。 最近のムーブメントはそうした影響を出来る限り受けないような工夫をこらしていますが、どうしてもテンプの振動数毎時1万8千回が、1万8001回になったり、1万7999回になったりします。(振動数が5回狂ったら1時間に1秒誤差がでることになります)
 また、ゼンマイの巻き具合も影響します。 ゼンマイが目いっぱい巻かれている状態では、動力は安定していますが、少しか巻いていない場合、特にもう少しでほどけきってしまう時は、動力が不安定になり、テンプの振動数が変わってしまいます。そのためどんなに時計技師が、工房で正確に調整したとしても時間に狂いがでてしまうのです。
 さらに機械式時計は、きちんと精度を保つためには2〜3年に1度オーバーホールが必要になってきます。しかし、高級機械式時計は精密機械工作技術の結晶です。 最新、最高の部品加工技術と、熟練の時計技師の組み立て技術が組み合わさって初めて誕生する
芸術品です。
  ゼンマイを巻き上げる手間も、多少の時間の狂いも、オーバーホールも、素晴らしい芸術品を所有するための僅かな代償にすぎません。 こうしたことを理解したうえで、高級機械式時計を購入、所有して頂きたいと思います。

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第6回 ドラマ、映画の中の腕時計

 ドラマの中で人気俳優のつける腕時計が話題になり、売り上げを伸ばしています。
 以前は、ドラマ自体がヒットしてもその小道具である時計に注目する人はごく少数でした。いったい、いつごろからそうなったのでしょうか?
 答えは 木村拓也さん主演の月9ドラマ「ラブ・ジュネレーション」からです。このとき木村拓也さんのしていたロレックスエクスプローラーTというモデルが注目されて、中古相場で定価の半額程度で取引されていた同モデルが急騰し、中古でも定価の80〜90%で、新品は定価以上(一時は50万円超)になってしまいました。マイナーチェンジした後は少し落ち着いて、現在は新品をディスカウント店などで、定価の85〜90%位で買うことができます。
 また、同じく 木村拓也さん主演の月9ドラマ「ヒーロー」のなかで、オメガスピードマスター125 という限定モデルをしたとき、これも中古相場が急騰しました。 (これはもともと1973年に2000本限定で発売された極めてマニア向けのものだったので、一般的に人気はあまり出ませんでした。)
 最近では、「踊る大捜査線TheMovie」で織田祐二さんの着けていたハミルトン カーキ、ウエンガー コマンドクロノ、映画「ターミネーター3」のシュワルツネッガーさんが着けているオーデマ・ピゲ ロイヤルオークなど多くの時計が話題にのぼっています。
 そのなかで一押しはルミノックスです。ルミノックスは1989年、アメリカで創業されました。 創立間も無い同社を知らしめたのは米国軍の要請で開発された「ネイビーシールダイブウォッチ」です。同社の社名ともなっているトリチウムガスによる驚異的な発光システム
「ルミナント」を使用し、米国海軍特殊部隊や空軍ステルス機パイロットが同社の時計を採用しており、ミリタリーウォッチメーカーとしての地位を確立しました。多くのアクション映画やドラマなどで俳優が使用しており、日本で大きくその名を知らしめたのは、またもや木村拓也さんが、日曜ドラマ「グッドラック」の中でパイロット用の時計として使用したためです。
 これにはさらに内輪話があります。このルミノックスはドラマが始まる前に、木村拓也さんと岩城洸一さんが別の番組で共演した際、岩城洸一さんから木村拓也さんへプレゼントされたものだったのです。
 再び岩城洸一さんと共演することになった木村拓也さんが、敬意を表してこの時計を使用したということです。岩城洸一さんから木村拓也さんへプレゼントされた モデルはF117ステルス ナイトホーク3402 の限定モデルでブレスのほかに2種類のナイロンストラップが化粧箱にセットされていたものです。 国内150セットのみの販売で、すぐに完売してしまったそうですが、3402ブレスタイプ単体
では現在も購入可能となっています(定価¥70,350税込)。また付属していたナイロンストラップの内、1本は単体で別売りされています。
 米国軍のみならず、警察や消防隊、他国の軍隊もこぞって採用しており、新モデルもぞくぞく発表されています。 今後が楽しみなブランドです。
 どの俳優がどこのブランドの時計をつけているのか、どこのアクセサリーを愛用しているのかをチェックして、憧れのスターが着用しているのと同じものを探してみるのも楽しいですよ!


第5回 時計購入の心得について

皆さんが時計を購入しようと思うのは、どのような時でしょうか?
入学や就職、誕生日や結婚記念日など、新たな生活を始めるときや、なにかの記念にと思う場合が多いと思います。 また、そうした人にプレゼントするということもあるでしょう。
ではどのような時計を選んだらよいのでしょうか?
自分で絶対欲しいと思っているモデルがある場合は簡単ですが、特に欲しいモデルが無い場合や、いくつか候補があって迷っている場合はどのように決めたらよいのでしょうか?
特に機械式時計は高価になりますので、入手してから後悔しないためにも購入の際はあらかじめ慎重に検討したいものです。

まず使用する目的やシュチエーションを考えてタイプを選びましょう。好みや予算に加えて、「どんな服装にあわせるのか?」とか「どんなシーンで使うことが多いか?」「どんな使い方をするのか?」といった点についても考慮するべきでしょう。

腕時計には大まかに分けてドレスタイプ、カジュアルタイプ、スポーツタイプ、ミリタリータイプ、高機能・複雑タイプの5つがあります。

1. ドレスタイプ
スーツスタイルと合わせた際にも違和感の無い、シンプルな機能とエレガントなデザインの時計です。 このほかベゼルや文字盤などにダイアなどの宝石が付いたジュエリータイプもこのカテゴリーに含まれます。代表格としては、カルティエ、ブルガリ等の宝飾系ブランドがあげられます。

2. カジュアルタイプ
カジュアルファッションの台頭にともない、あるいはメンズブランドやデザイナーズブランドの時計界への積極的参入にともない、近年、人気が高まりつつあるジャンルです。 ポップ系、アールデコ系、未来派系、キャラクター系など多彩なデザイン、ブランドがあります。 低価格のものからあり、お好み次第です。

3. スポーツタイプ
若い層を中心に最も人気のあるタイプです。 陸上競技やカーレース用などに開発されたクロノグラフと、潜水用のダイバーズがポピュラーですが、他にサッカー用、ヨットレース用(レガッタウォッチ)、アウトドア用など様々なタイプがあります。 いずれも高い防水性と耐久性、スポーティーな外観が共通します。 代表格はロレックスのサブマリーナやデイトナ、オメガのスピードマスター、シーマスター等ですが、これらはスーツスタイルにも違和感なく溶け込み、人気があります。

4. ミリタリータイプ
軍用時計とは各国の軍が規定する仕様をもとに製作され納入された時計を指します。最近は、特に軍から依頼されたわけではなくても同様のデザイン、機能を持たせた時計も販売されるようになってきました。シンプルな機能、高防水性、高堅牢性、高視認性が特徴です。パイロットウォッチもこの分野に含まれ、ジン、ルミノックス、ブライトリング等が代表格です。

5. 高機能・複雑タイプ
上記4つのタイプに当てはまらない、もしくはその特徴を複数兼ね備えているタイプです。前回とりあげたグランドコンプリケーションや、レトログラード(針の往復で時刻を表す機構)、ジャンピングアワー(時刻を瞬時に変わるデジタル表示で表す機構。 機械式では分を回転する針で、時をデジタルで表す方式が多い)等がこのタイプになります。他のタイプに比べて高額なものが多く、いわゆるマニア向けの時計になります。代表格はパテックフィリップ、ユリス・ナルダン、IWC等です。

以上の特徴を考慮して、タイプを選んでいただくのも時計選びの楽しみだと思います。
たとえば、オンタイムで多用したいと考えるのであれば、あまり派手でないドレスタイプがベストです。重要な会議や冠婚葬祭等、しかるべきシーンでも違和感なく使えます。さらにカジュアルでも使用したいと思うのであれば、一押しはロレックスのエクスプローラーTです。 タキシードにジーンズ、さらに登山服にも合う時計なんてなかなか無いですよ!


第4回 グランド コンプリケーション

最近グランドコンプリケーションという言葉を耳にしますが、皆さんは何のことだかご存知でしょうか?
時計業界では、重要な発明とされる複雑機能が6つあります。機械式時計でこの6大複雑機能のうち3つ以上搭載している時計をグランドコンプリケーションと呼びます。

6つの複雑機能とは以下のものになります。
1. ムーンフェイス:月の満ち欠けを表示します。 多くの場合、扇形の窓と月の絵を描いた円盤の回転で表示しますが、中には宝石をあしらった球体が回転するゴージャスなものもあります。

2. スプリット セコンド クロノグラフ:単なるストップウォッチではなく1回目の時間計測を行ったあと、その表示を残したまま別の針で2回目の計測を継続して行う機能です。 レースで周回ラップを測るとき便利です。

3. ミニッツ リピーター:ボタンを押すと、音で現時刻を教えてくれる機能です。 音の音色と鳴る回数で時刻を判断します。 もともとは暗闇の中でも時刻を把握するために発案されたもので、機械式ではゴングを内蔵して、それをハンマーで叩く方法がとられます。

4. 永久(パーペチュアル)カレンダー:大小の月の日数に対応して全月末の翌日に自動的に1日を表示でき、閏年調整のため4年に1度動く表示が付加されたカレンダー機構のことです。 通常2100年まで無調整で対応できるものを指します。

5. ウルトラスリム:全パーツが極薄いケースに組み込まれたムーブメントのことです。 明確な基準はないようですが、厚さが4mm以下のものを指すようです。 しかし、ここまで薄くすると、他の複雑機構を組み込むことが難しいため、グランド コンプリケーションには殆ど使われません。ウルトラスリムの代表格として、ブランパンのキャリバー21が有名ですが厚さはなんと1.7mmしかありません。

6. トゥールビヨン:脱進調速機(テンプとガンギ車、その他の歯車を組み合わせたもの)を1つのかごに収め、それ自体を一定の速度で回転させることにより、時計の姿勢によって生じる重力差でテンプの振動が変化するのを平均化させて自動補正する複雑機構です。6大複雑機能の中で最も製作が難しく、トゥールビヨンを組み込んだ時計は数百万〜数千万円するものもあります。 トゥールビヨンはフランス語で渦巻きを意味します。

機械式のグランドコンプリケーションは、その複雑さゆえ量産が難しく価格も50万円〜数千万円と非常に高くなります。 最近は、クォーツ式でムーンフェイス、スプリット セコンド クロノグラフ、ミニッツ リピーター、永久(パーペチュアル)カレンダーの4つを組み込んだクォーツ式グランドコンプリケーションも発売されており、数万円代で入手することもできます。デザイン的にも色々凝った時計が発売されていますので、ブランドにこだわらず、探してみてはいかがでしょうか? 思わぬ掘り出し物にめぐりあえるかもしれません。

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第3回 時計の日付合わせの方法

日常の時計使いのなかで、最もトラブルが多いのが日付合わせです。
30日しかない月もあり、日付を合わせるため1日早送りしなければなりません。日付送り機構は、だいたい夜9時くらいから歯車がかみ合わさりはじめ、朝3時くらいで離れていきます。 その間に日付を早送りすると、針と連動するための歯車を痛めてしまう場合があります。 その結果、日付表示がずれたり、日付送りできなくなったりするトラブルが発生します。これは機械式、クォーツ式を問わず最も多いトラブルです。
そこで、トラブルを起こさない正しい日付および時刻の合わせ方を説明します。ここでの説明は一般的の構造の時計で説明します。(中にはやり方の違う時計もありますので、良く分からない場合は、お買い上げ店にお尋ねください。)

一般的なカレンダー付の時計の場合、リューズは2段引きになっており、1段目が、日付調整、2段目が針調整になっています。 2段目の針調整ではほとんどの時計は、リューズを下に回すと時間が進みます。 リューズを上に回すと時間が戻る方向になりますが、機械に負担をかけるため、極力逆回しはしないでください。カレンダーが日付のみで曜日の無い場合、月末の日付早送りは、リューズを2段目まで引き出し、針を24時間早送りして、日付を1日送ることをお勧めします。 このやり方ならば、カレンダー機構を痛めることなく、いつでも日付を進めることができます。リューズを引き出して、1段目に合わせるのはかなり微妙な感覚が必要になります。 自分では1段目に合わせたつもりでも、中途半端になっていて無理に回すとカレンダー機構を痛めてしまう場合がありますので、2段目まで引き出したほうが確実です。また、1段目に合わせる場合は、一度2段目まで引き出してから、1つ戻すほうが、位置が決まり易いので、なかなか1段目に合わせられない人は試してみてください。
長い間、時計が止まっていて日付が大きくずれてしまった場合は以下のようにしてください。
まず、リューズを2段目まで引き出して、針を進めます。 0時で日付が変わるのを確認し、さらに針を進めて、午前11時くらいに一旦セットします。次に、リューズを1段目に戻して、日付を早送りします。 日付を、目標の日付の1日前にセットして、再びリューズを2段目まで引き出します。さらにリューズを回転させて時間を進め、0時を超えさせて、日付を目標の日付に送り、現在時刻を確認して時間を合わせます。そしてリューズを元の位置に戻して、終わりです。 このようにすれば、カレンダー機構に負担をかけることなく、また針を逆回しすることなく、日付合わせ、時間合わせができます。


第2回 日常の使用法

今回は時計の日常の使用方法について説明します。
機械式時計の場合、ゼンマイを動力としているため、手巻きであれば、手動でゼンマイを巻き上げる必要がありますし、自動巻きでは、1日の内ある一定時間以上は腕に付けてゼンマイを巻き上げてやらなければなりません。
では、手巻きの場合はいつどの位巻き上げてやればよいのでしょうか?また、自動巻きは1日何時間くらい腕に付けていなければならないのでしょうか?

手巻きの場合、1日に1回、巻く時間帯は1日のうち自分のやり易い時間でかまいませんが、常に同じ時間に巻き上げるのが、ゼンマイに最も優しい巻き上げ方です。 一般的には、朝1番におこなうのが良いでしょう。また、巻く回数はフルに巻き上げるのが基本です。通常フルに巻き上げても、よほどの怪力でない限り、ゼンマイが切れる心配はありません。 ただし、ゆっくり優しく巻き上げてゆき、リューズに大きな抵抗がかかったら止めてください。
自動巻きは1日8〜10時間、腕に付けている必要があります。 また、デスクワークが多い人や、腕の振りが少ない人は、十分巻き上げられない場合がありますので、手巻き同様、朝一番で20回程度リューズを巻き上げてやると良いでしょう。 自動巻きは巻きすぎ防止機構が組み込まれているので、巻きすぎで、ゼンマイを切ってしまう心配はまったくありません。
正しいゼンマイの巻き方は、親指と人差し指でリューズをはさみ、ゆっくりと下から上へ巻き上げ、そのまま指を離さず逆回しを行います。 再び、下から上へ巻き上げて、再度逆回しを行い、ゼンマイが完全に巻き上がるまでこれを繰り返します。また、機械式時計で2〜3日腕に装着せずにおいたため、止まってしまうことがあります。 その場合は、時刻合わせ、日付合わせを再度行う必要があります。その場合、注意すべきことがいくつかありますので、次回説明します。

時計を外す場合は、その置き場所に注意しましょう。 磁気を発生させるものの近くに置くと、ムーブメントが磁気の影響を受けて精度が狂う場合があります。 携帯電話や、テレビ、パソコンのスピーカーの近くなどは要注意です。 また意外と盲点なのが、マグネットのついたクリップのそばやマグネット開閉金具式のバックの中など、家電製品でなくても、時計に悪影響を与えるものが意外と身近にあることに注意してください。また、スポーツをするときは基本的に時計をはずすようにしましょう。とくに機械式は衝撃に弱いため、激しい腕の動きを伴なうスポーツは厳禁です。ゴルフ、テニス、バトミントンなどを行う場合は、時計を外しておきましょう。非防水の時計は、出来るだけ水辺に持っていかない様にしましょう。手洗いの際にも水をかけない様に注意してください。 3気圧、5気圧防水は、非防水と同等と考えておいてください。 10気圧防水でも、リューズがねじ込み式になっていなければ、水に浸すのは危険です。1日時計を使い終わったあとは、毎日汗や汚れを拭き取ってやってください。


第1回 日常の基本メンテナンス

皆さんは仕事から帰ったあと、使用していた時計のケアをしていますか?腕からはずしてそのままという人が多いのではなうでしょうか?
腕時計のケース、ブレス素材はステンレスなどの腐食に強い素材が使用されていますが、汗や皮脂などを付着したままにしておくと、それらが酸素と反応して金属を腐食させることがあります。このことからも日々のケアの大切さがおわかりになると思います。しかし、汚れがひどい場合はともかく、通常は柔らかい布で皮脂を拭き取るだけで十分です。 隙間などは、たまにチェックし、気になるところがあれば
以下にあげるような方法でケアしてください。

1.ケースの汚れの除去
軽度の汚れであれば、柔らかい布かセーム革などで優しくみがきます。裏蓋との隙間、ベルト取り付け部分のへこみに詰まった汚れは、木製か竹製の爪楊枝で除去します。 可能なら、革ベルト、ブレスを取り外して作業すれば、隅々まで汚れ落しができます。

2.ブレスレットの汚れの除去
コマ同士の隙間、コマと時計の繋ぎ金具との間、繋ぎ金具と時計本体の間など、ブレスには皮脂の溜まり易い個所が多くあります。
コマ同士の間に溜まった汚れやほこりは毛先の柔らかい歯ブラシを使用して掻き出すように除去しましょう。 隙間の奥まで入り込んだ汚れは爪楊枝を利用して落とします。 た時計使用後は、柔らかい布等で汚れを拭き取っておきましょう。時計専門店などで、ブレスを外して超音波洗浄機でまるごと洗浄するサービスを行っているところもありますので、各店で尋ねてみてください。

3.革ベルトの汚れの除去
1日中使用した後は、乾いた布で革に染み込んだ汗を吸い取りましょう。これだけで悪臭の発生や、革質の劣化をある程度防ぐことができます。また、汗をかき易い夏場はブレスに付け替えたほうが賢明でしょう。

4.ベゼルの汚れの除去
ベゼルの中でも回転式の場合、気が付かないうちにケースとの隙間にほこりなどの汚れが溜まっていることが少なくありません。 放置していると詰まりやサビ浮きなどでベゼルが回転しにくくなったり、全く回転しなくなってしまう場合があります。 回転ベゼルと本体の非常に狭い隙間に入り込んだ汚れは爪楊枝を使って、先端で掻き出すようにすると効果的に除去することができます。

5.リューズの汚れの除去
ねじ込み式の場合、リューズ本体の内側と、それに接するパイプ側に各々ねじ山があり、ここに汚れが溜まるとリューズがねじ込めなくなるなどの不具合が発生することがあります。 最悪リューズが錆付いて、引き出しも回転もさせることが出来なくなってしまいます。 こまめに歯ブラシでねじ山の汚れを落としておきましょう。 その場合、リューズを下に向けて落した汚れがパイプから時計内部に入ってしまわないように注意しながら作業しましょう。 ねじ山に錆が発生していたら、時計専門店に依頼して落してもらいましょう。

6.風防の汚れの除去
誰にとっても風防は最も汚れが気になる部分です。 著しい汚れは時刻を読み取る妨げにもなります。 毎日お手入れしましょう。通常の汚れなら目の細かい柔らかい布等で拭くだけで十分です。プラスチック製の風防は傷が入り易いので、まずブラシ等で細かいほこり等を払ってから拭いてください。 これを怠るとかえって傷つけてしまいます。

毎日ちょっと手をかけてやるだけで見違えるほど奇麗になり、時計の持ちも良くなります。 基本は「使用後はすぐに汚れを取り除く」です。

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