第21回  ウブロ ビックバン

ウブロは1980年にバーゼルフェアで、ゴールドとラバーという従来では考えられなかった組み合わせで衝撃的なデビューを飾って以来、そのイタリアン・モダンを象徴するような繊細で、昔の潜水ヘルメットを連想させるケースとラバーストラップを組み合わせた「ウブロスタイル」と呼ばれるモデルを作り続けてきました。
そして基本デザインは守りながら、ケース素材に、チタン、タンタル、ピンクゴールドなどの新素材を他社に先駆けて採用し、また文字盤にいん石(メテオライト)を使うなど、常に新しいことにチャレンジしてきました。そのウブロが、2005年にCEOにジャン・クロード・ビバー氏が就任したのを機に、打ち出した新コンセプトが「フュージョン(融合)」であり、これが意味するものは、セラミック、ゴールド、ケブラーなど様々な素材の融合、そして伝統と未来の融合です。そしてこの「フュージョン」を時計の形に表したものが「ビック・バン」 なのです。
このシリーズはデザインが同じで素材違いが何種類も用意されています。ケースはセラミック、ピンクゴールド、また、2006年にはホイールメーカーとコラボレートしてマグネシウムケースを使用した「マグ・バン」を発表しています。この「マグ・バン」はムーブメントの地板、ブリッジ等にチタンを使用して、総重量65gという超軽量を実現しています。 ちなみにロレックス サブマリーナデイト(フル駒)で131gあり、その半分の重さということになります。また、「ビック・バン」はベゼルにSS、ピンクゴールド、ホワイトセラミック、ブラックセラミックが用意されており、それをH型ビスで本体に固定し、ウブロ独特の潜水ヘルメットを彷彿させる、リベット、ビス止めベゼルのデザインを踏襲しています。また、プッシュボタンにはラバー、ケース側面には耐熱、耐衝撃性にすぐれたケブラー素材が使われており、ウブロの象徴であるラバーベルトが本体の間を通っているように見えます。ベルトはラバー以外にピンクゴールドモデルのみピンクゴールドとセラミックの駒によるブレスが用意されているようです。 (他の素材のブレスは未確認)
「ビック・バン」はその特異であると同時にウブロらしいシャープでエレガントでどこか懐かしいクラシカルなスタイルにより、デビューより1年足らずで世界中のセレブやコレクター、時計マニアを虜にしました。日本でも朝の番組で超有名司会者がしているようです。(ちらっとしか見えていないので真偽は未確認。)
この「ビック・バン」に用いられているセラミックケースは、実は「京セラ」製です。このケースは他のブランド(例えばシャネルJ12、韓国製)が曲線主体のもっこりとした形状に対して、非常に鋭角的なラインを持っています。これは、1回の焼結工程、研磨工程でできるものではなく、焼結後のカットや研磨に多くの手間と時間をかけている証拠です。また、ベゼルに使われているホワイト、ブラックのセラミックは実に鮮やかなカラーを持っていますが、この色味を一定に保つには、完璧な組成コントロール、品質管理が必要となり「京セラ」がいかに高い技術力を持っているかが判ります。
こうした時計史に残るようなモデルに、日本の高い技術が使われている事は、嬉しい限りです。