第34回 シチズン パーフェックス

伝説の時計で紹介してはいますが、シチズンにパーフェックスという機種はありません。パーフェックスとは、「JIS種耐磁」「衝撃検知機能」「針補正機能」という3つの機能を持たせることより正確な時刻を表示するフルメタルでエコドライブを搭載した電波時計の事で、エクシード、アテッサ、クロスシー、プロマスターの高級機種に搭載されています(時計の豆知識 31回 標準時と電波時計でも触れています。
シチズンは1970年代に機械式時計の生産を打ち切り、クォーツ、デジタル式時計に特化してきましたが、他社との差別化をするため革新的技術の開発に全力を注いできました。1976年に世界初のアラーム付デジタル時計を発売したのを皮切りに、エコドライブの基礎となった太陽電池充電式や電卓付など次々に新技術を発表し、クォーツ、デジタル時計部門で、技術のシチズンの名を不動のものにしました。電波時計の開発には1989年から着手して、1996年には世界初エコドライブ搭載の電波時計を発表しています。現在では、エコドライブ搭載の電波時計は普通のクォーツ時計とデザインや大きさなど全く同じになっていますが、当初は電波受信アンテナがあまり小型化できず、左側に大きくはみ出した左右非対称のデザインでした。また、エコドライブ用2次電池の容量確保のため、厚みも大きく、文字盤も太陽光を通さなければならないため、文字盤の色や装飾デザインが限られていました。また、電波の受信を確実にするため、本体の一部にプラスチックを使用していました。しかし、色やデザインを自由にできながら透過光の多い文字盤や低消費電力のムーブメントの開発、容量を変えずに2次電池のコンパクト化、受信アンテナの小型化、高性能化を実現し、ムーブメント径で世界最小、世界最薄(時計完成品厚7mm以下)、フルメタルボディを達成しています。
そしてシチズンはここで終わらず、より正確な時刻を表示することを追求しました。 普通、電波時計は常に正確だと思いがちですが、実は電波時計は1日のうち1~2回決められた時間に自動的に、もしくは任意の時間に手動で標準電波を受信して、時間を補正するもので、電波受信していない時に、磁気の影響や、衝撃により時間が狂ってしまうことがあります。そこでシチズンはエコドライブ電波時計にまず、高い耐磁性能を持たせました。耐磁性能とアンテナの電波受信能力は、実は相反するものなのですがシチズンはムーブメントの片側に時刻調整機能を集約して耐磁ケースで覆い、その反対側にアンテナを配置することにより、アンテナ内蔵型電波時計では難しいとされていたJIS1種耐磁(直流磁界4800A/mに耐えられる水準)を実現しています。 また、衝撃検知機能により、外部からの衝撃を検知してICにより秒針を制御して、針ずれを防止するようにしました。さらに、それでも何らかの原因で狂ってしまう可能性を考慮して、センサーにより60秒ごとに針位置を検出して、IC内部の時刻カウンターとずれていた場合は、瞬時に補正をかけるようにしました。 この結果、電池の交換の必要がなく、正確な時刻を常に表示し、万が一狂ったとしてもすぐに補正される、まさにパーフェクトな腕時計となりました。 また、ケース、ブレスに関しても、デュラテクトというシチズン独自の特殊表面処理を施すことによって、SS素材で通常ビッカース硬度 Hv200程度のものを、Hv1000以上に高めることにより、傷をつきにくくしています。
国産クォーツ時計というと、大量生産の安物のようにみられがちですが、こうした付加価値の非常に高い時計もあります。海外ブランドものばかりでなく国産ブランドにも今一度目を向けてみてはいかがでしょうか。