第10回 オーバーホールについて

皆さんは時計のオーバーホールをしていますか?
車をお持ちの方は、2年ごとに車検を受けるのはご存知だと思います。時計にとってのオーバーホールは、車にとっての車検と同じです。車の場合、整備不良は命に関わってくるため車検が法律で義務付けられていますが、時計も整備不良になれば、時間が狂ったり、動かなくなったり
します。 ですから、オーバーホールは大切な時計を長く愛用するためには絶対に必要なものです。
オーバーホールとは簡単に言えば、時計を分解して手入れすることです。車の場合は、オイルの入れ替えやブレーキパッドの点検等が行われますが、機械式時計の場合は、部品1つ1つに完全に分解して、洗浄し、再組み立て、注油が行われます。 もちろんその過程で分解した部品の状態、動作状況、精度確認など、様々なチェックが行われます。
数多くの部品から成り立っている機械式時計の場合、機械が動けば必ず金属の磨耗が起こります。 もちろん磨耗を防ぐために、稼動部にはオイルが塗布されていますが、完全に磨耗を防ぐには至らず、微細な金属片がオイルに混入してゆきます。 これがオイルを劣化させ、さらに古くなったオイルはべとべとに固まって、機械の動きを阻害し、故障の原因にもなります。そこで機械の耐久性を高めて精度を維持してゆくために、汚れたオイルを奇麗に除去して、新しいオイルを塗布します。 これがオーバーホールの最も重要な役割なのです。
オーバーホールの手順は、ケースやブレスレットなどの外観チェックから始まります。 分解作業は、各部品の状態を見ながら慎重に行われます。不良個所が見つかればその都度、修理または部品交換をしてゆきます。全ての分解、不良個所の修正が終われば、洗浄作業に入ります。
ムーブメントの洗浄は、ケース、ブレスなどの外装部品とは別に、専用の自動洗浄装置で行われます。 洗浄が終わり、十分に乾燥させたあと、組み立てが始まります。 これも洗浄と並んで重要な作業です。必要な個所に、必要な量のオイルを注油しながら(多すぎても少なすぎてもダメ)、なおかつ部品と部品の隙間の微調整を行いながら組み立てて行きます。そして、テスターを使った精度チェックや、防水性能のテストおよび最終調整を行い、オーバーホールは完了します。 オーバーホールに要する時間は、特に問題の無い場合、時計の分解、洗浄、組み立てに2~3日、精度チェックに4~5日かかり、トータルでどんなに早くても10日程度かかります。
精度チェックで問題が出たら、再度微調整を行い、ときには再度分解する場合もあります。 また混んでいる場合、すぐに作業にかかれないこともありますので、そうした余裕も含めて、どこの時計店、メーカーでもだいたい1~2ヶ月位の納期をいってくるのが普通です。 また、クロノグラフなどの複雑機構をもつ機種は3~6ヶ月位かかる場合もあります。
一般にオーバーホールは3~5年に一度の目安で行うべきです。長い間、オーバーホールしないでおくと、汚れや磨耗によって故障が起き易くなり、修理やパーツ交換の費用なども、オーバーホールよりずっと高くついてしまう場合があります。
ロレックスの場合、2~3年毎にオーバーホールを行えば、30~40年は十分にもちます。 オーバーホールの料金は、各店舗やオーバーホールする時計のブランドや型式、部品交換の有無等で変わってきますので、作業を進める前に、見積もりを出してもらうほうがいいでしょう。
ロレックスで3針モデルの場合、2~3万円位が相場です。 デイトナなどのクロノグラフモデルの場合、5万円以上することもあります。
機械式時計を購入する場合は、オーバーホールの費用のことも考えて決断をしてください。