第20回 バーゼルフェアとSIHH(ジュネーブサロン)

 バーゼルフェアとは毎年春にスイスのバーゼル市で開かれる世界最大の時計、宝飾品見本市です。
期間は1週間前後で世界各国からメーカー、バイヤー、ジャーナリスト、一般客など10万人以上が集まります。 歴史も古く、時計業界では最も重要なイベントで、時計だけでも500以上のブランドが出展し、各ブランドが新作やコンセプトモデル、フラグシップモデル(代表的な主力商品)を発表します。 画期的な新製品や新しいトレンド商品が一堂に揃うため、業界関係者だけだなく、一般ユーザーの注目も年々高まっています。 開催期間中は各メーカーが主催するパーティーも毎晩のように開かれ、VIPユーザー、業界関係者の招待客のみ入場可能なブライトリングのサプライスパーティーなどはマニア垂涎の的となっています。
また、各ブランドのブースも高級ブティックさながらの作りとなっており、それぞれ趣向を凝らして他のブランドとの違いを打ち出しています。
ロレックスのブースはセキュリティーが厳重で、アポイント無しでは業界関係者でも入れてもらえないそうです。
各メーカーは、新作や限定品、技術力をアピールするコンセプトモデルを発表し、その場で受注することもあります。 特にマニアの間で人気の高い新作限定品などは、このバーゼルフェアで予約数が予定製造本数に達してしまい
商品が一般小売り市場に出回らないこともあります。 コンセプトモデルは一般に発売されることはなく、各メーカーが自社の博物館に展示するか、アンティコルムなどの特別オークションに出品されます。
SIHHは高級時計ブランドを紹介するのにふさわしい会場を、ということで1992年にカルティエを中心にバーゼルワールドから独立して発足したのが始まりで、リシュモングループを中心とする16のブランドが参加しています。
開催地はスイスのジュネーブ市で、一般客も多く来場するバーゼルフェアとは異なり、SIHHから招待を受けた商談関係者やジャーナリストなど、限られた人だけが入場を許されています。 ジュネーブサロンの愛称のとおり、会場は落ち着いたムードが漂い、まさにVIP限定の高級サロンといった趣です。
SIHHの参加ブランドは現在 カルティエ、オーデマ・ピゲ、ボーム&メルシー、IWC、ジャガー・ルクルト、ジラール・ペルゴ、パネライ、ピアジェ、ダンヒル、ヴァシュロン・コンスタンタン、ヴァンクリーフ&アーペル、ランゲ&ゾーネ、モンブラン、(ダニエル)ジャンリシャール、パルミジャーニ・フルーリエ、ロジェ・デュブイ の、老舗ブランドや個性豊かな新興ブランド16社です。
SIHHは、バーゼルフェアとほぼ同時期に開催され、世界中の時計業界の人達は毎春スイスに集まり、バーゼルフェア、SIHHをはしごするのが通例となっています。
この2大展示会のほかにジュネーブ郊外で、フランク・ミューラーを中心にWPHHという高級時計展示会がやはり春に開催されています。 もとは強大化、大衆化するバーゼルフェアや、エクスクルーシブな(排他的、独占的な)SIHHのいずれにも属することなく独自の道を歩むために、1998年にフランク・ミューラー・ウォッチランド社が自社敷地内で開催したのが始まりです。 現在、フランク・ミューラーの他にピエール・クンツ、ヨーロピアン・カンパニー・ウォッチが参加しています。
また、この時期にバーゼル、ジュネーブ(SIHH)の会場周辺で、独自の展示会をおこなうブランドも増えてきており、時計の商売に関わる者として一度は訪ねてみたいものです。